好調ヤリスの影でフィットが意外に伸び悩む訳 クロスオーバーで明暗?

■フィットクロスターの魅力と売れ行き伸び悩む訳

普段使いのSUVは街乗りが多くなるが、路面の凹凸などで走破性を求められることもある。その点フィットクロスターはより快適に走れる
普段使いのSUVは街乗りが多くなるが、路面の凹凸などで走破性を求められることもある。その点フィットクロスターはより快適に走れる

 その点でフィットクロスターは、フィットに属するグレードだから、ヤリスクロスに比べて特別感が乏しい。また、ヤリスクロスに相当するコンパクトSUVをホンダ車で買いたいユーザーは、フィットとは別設計のヴェゼルを選ぶことも影響した。

 ヴェゼルは発売から約7年を経過したが、2020年9月の登録台数は2894台だ。フィットクロスターの1300~1400台に比べると、今でも多く売れている。

 ヴェゼルはヤリスクロス、あるいはフィットと比べても後席と荷室が広いので、実用性を重視するユーザーの間では人気が高い。言い換えればヴェゼルのラインナップにより、フィットクロスターが売れ行きを伸ばせない事情もある。

 このように見てくると、ヤリスクロスとフィットクロスターの間に4~5倍の販売格差が生じるのも理解できるが、両車を乗り比べるとフィットクロスターのメリットも実感できる。

 それは乗り心地と走行安定性のバランスだ。フィットクロスターが装着する16インチタイヤは185/60R16だから、フィットのほかのグレードが装着する185/55R16に比べて空気充填量が多い。タイヤの指定空気圧も異なり、クロスターのハイブリッドでは、前輪を220kPa、後輪は210kPaに抑えた。

 ほかのグレードは、転がり抵抗を下げる目的もあって230kPa・220kPa、あるいは240kPa・230kPaだから、低速域で路上の細かなデコボコを伝えやすい。クロスターはそこを快適に仕上げた。

 一方、ヤリスクロスは、指定空気圧は高くないが、足まわりの設定によって乗り心地は硬めだ。前述の通り、後席と荷室のスペースもフィットクロスターに比べて狭い。

■人気に差はついても両車の魅力は拮抗

フィットクロスターにもルーフレールが装備されるなど、SUVらしい外装が用意される
フィットクロスターにもルーフレールが装備されるなど、SUVらしい外装が用意される

 価格も異なり、フィットクロスターのノーマルエンジン車は193万8200円、e:HEV(ハイブリッド)は228万8000円だ。ヤリスクロス「Z」は、割安とはいえノーマルエンジンが221万円、ハイブリッドは258万4000円に達する。

 ヤリスクロスはSUVらしい外観と外装パーツによって、一種のプレミアム感覚を漂わせるが、価格はフィットクロスターが27~30万円安い。

 従って登録台数に4~5倍の格差が生じても、両車の魅力は拮抗している。ヤリスクロスとフィットクロスターで迷うユーザーは少ないと思うが、フィットを選ぶ時には、ホームだけでなくクロスターも試乗して判断したい。特に乗り心地の違いは、実際に乗らないと分からない。

【画像ギャラリー】明暗を分けた登録台数! コンパクトSUVの競合車 トヨタ ヤリスクロスとホンダ フィットクロスターを見る

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