新型ヤリスはヴィッツと何が変わったのか? 2020年最大級のヒット車に急成長!

 5か月連続で登録車販売No.1達成! 車名変更で人気も拡大。トヨタの売れ筋コンパクトカー「ヤリス」は、従来の「ヴィッツ」と何が変わったのか?

 小型/普通車の登録台数ランキングを見ると、2020年7~11月まで、ヤリスが1位を獲得した。特に9月以降は登録台数を伸ばし、軽自動車のN-BOXを抑えて国内販売の総合1位になっている。

 ヤリスの登録台数が9月以降に増えた理由は、8月31日に発売されたSUVのヤリスクロスを加えたからだ。ヤリスクロス単独の登録台数は、メーカーによると、9月が約6700台、10月は約6900台、11月は約1万台だという。

 ヤリスとヤリスクロスは、エンジンやプラットフォームは共通だが、外観はまったく異なる。ヤリスは日本ではヴィッツの後継となるコンパクトカーで、ヤリスクロスはSUVだ。

 そこで日本自動車販売協会連合会がヤリスとして公表している登録台数から、ヤリスクロスを差し引くと、ヤリスの登録台数は9月が約1万5400台、10月は約1万2700台、11月は約9900台になる。これらの数値はすべてN-BOXを下まわり、10/11月はコンパクトSUVのライズと比べても少ない。

 このようにコンパクトカーのヤリスに限ると、国内販売の1位とはいえないが、人気車であることに変わりはない。そこで改めてヤリスの魅力や欠点を、従来型のヴィッツと比べながら考えてみたい。

文:渡辺陽一郎/写真:TOYOTA

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■ヴィッツから新型ヤリスへ! 変化した設計思想

ボディサイズは、全長が3940mm、全幅は1695mm、全高は1500mmだ。ヤリスは2名以内の乗車を想定したパーソナル指向のコンパクトカーに位置付けられる。

 ヴィッツも好調に売れたコンパクトカーだから、現時点でも膨大な台数が保有されている。読者の皆さんにも、ヴィッツからヤリスへの乗り替えを考えている方がおられるだろう。参考にしていただきたい。

 まずヤリスのボディサイズは、全長が3940mm、全幅は1695mm、全高は1500mmだ。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2550mmになる。最終型のヴィッツとボディサイズはほぼ同じで、ホイールベースはヤリスが40mm長い。

 そうなるとヤリスはヴィッツよりも室内が広がりそうだが、実際は逆だ。ヤリスはヴィッツに比べると後席の位置を後退させ、ペダルの配置や運転席の着座姿勢を最適化した。そのために後席の足元空間がヴィッツよりも狭まった。

 身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は、ヴィッツは握りコブシ1つ半以上を確保したがヤリスは1つ少々だ。前後に座る乗員同士の間隔も、ヤリスはヴィッツに比べて37mm少ない。床と座面の間隔も32mm減ったので、ヤリスは腰が落ち込んで膝の持ち上がる座り方になりやすい。

 つまりヴィッツは4名乗車の用途も考慮して開発されたが、ヤリスは運転姿勢を含めて前席を優先した。そのために後席が狭くなっている。

 この背景には、SUVのヤリスクロス、今後登場が予想される天井の高いコンパクトカーなど、後席の居住性を高めた車種の存在がある。「ヤリスシリーズ」において、ヤリスは2名以内の乗車を想定したパーソナル指向のコンパクトカーに位置付けられる。

 同様の理由で荷室の広さもヴィッツが勝る。ヤリスはリヤゲートを寝かせたが、ヴィッツは比較的直立させたので、背の高い荷物も積みやすい。

 このように実用性は総じてヴィッツが優れていたので、ファミリーカーとして使うユーザーがヴィッツからヤリスに乗り替える時は、後席や荷室の広さに注意したい。

■新型ヤリスになって大幅向上したクルマとしての「質」

機能性はもちろん、快適さも妥協しなかったヤリスの室内。これは「X(1.5L・2WD・CVT) (内装色 : ブラック)」である。

 逆に内装の質はヤリスが高い。ヴィッツの発売は2010年で、2008年に生じたリーマンショック(世界的な経済不況)の影響を受けた。そのために内装や静粛性は、2005年に登場した2代目ヴィッツを下まわっていた。

 特にヴィッツハイブリッドは、モーターのみの駆動で発進した後、エンジンが始動するとノイズが一気に高まった。販売店からは「先代型のお客様に新型ヴィッツへの乗り替えを提案できない」という悲痛な意見まで聞かれた。

 この後、ヴィッツは複数回にわたって内装の質とノイズを改善したが、改良で対応できる範囲には限界がある。その意味でヤリスは、エンジンやハイブリッドからプラットフォームまですべてを一新して、快適性を向上させた。内装の造りを含めて、ヤリスが上質に感じる。

 ヤリスで売れ筋になる直列3気筒1.5Lのノーマルエンジンとハイブリッドを、ヴィッツの直列4気筒1.3Lや1.5Lハイブリッドと比べると、動力性能はヤリスが上まわる。特にノーマルエンジンは、ヤリスでは排気量が200cc増えた影響で、実用回転域の駆動力が向上した。1400回転付近でも充分な性能が発揮されて運転しやすい。

 ハイブリッドもヴィッツに比べると、モーターの駆動力に余裕が生じた。アクセルペダルを軽く踏みながら走る時は、モーターの駆動力により、排気量が1.7L前後に拡大した印象がある。ヤリスのエンジンはすべて3気筒になったが、動力性能には余裕が生じた。

■ヴィッツから新型ヤリスへ! 変化した設計思想

ヴィッツ(MC後、2014年)

 運転感覚で大きく異なるのは走行安定性だ。ヴィッツでは後輪の接地性を高めて車両の挙動を安定させるため、操舵に対する反応が鈍めだった。峠道などを走ると旋回軌跡を拡大させやすく、危険を避けた後の安定性は高いが、避け切れないことが想定された。

 その点でヤリスは、操舵に対する車両の反応が正確で、4輪の接地性も高い。危険を避けた上で、その後の挙動も安定している。プラットフォームの刷新により、車両の安定性が総合的に向上した。

 このような挙動を示すのは、足まわりが正確に作動している結果だから、乗り心地もヴィッツからヤリスになって向上した。ヴィッツに比べると細かなデコボコを乗員に伝えにくく、突き上げ感も抑えている。

 ただし、ヤリスの乗り心地がすべて快適なわけではない。14インチタイヤは転がり抵抗を抑えた燃費重視で、指定空気圧も前輪が250kPa、後輪は240kPaと高い。そのために乗り心地が硬く感じられる。

 最も快適なのは15インチで、次は16インチだ。ユーザーによっては、引き締まり感を伴う16インチを好む場合もある。ヤリスではタイヤによって乗り心地が大きく変わるので注意したい。

■安全装備の充実などで買い得感もヤリスになって向上

注目はノーマルエンジン。ヤリスでは排気量が200cc増えた影響で、実用回転域の駆動力が向上した。1400回転付近でも充分な性能が発揮されて運転しやすい。

 ヤリスとヴィッツでは燃費も大きく異なる。ヤリスは1.5Lノーマルエンジンを搭載する「G」が21.4km/L、Zは21.6km/Lだ。ヤリスハイブリッドは、「G」が35.8km/L、「Z」は35.4km/Lになる。ヴィッツはJC08モード燃費だから直接比較はできないが、ヤリスハイブリッドの燃費数値は、国産乗用車では最高峰だ。

 このほか進化の著しい安全装備も、ヤリスでは大幅に充実した。衝突被害軽減ブレーキは、昼夜の歩行者に加えて昼間の自転車も検知する。右左折時に、対向車や横断歩道上の歩行者に反応する機能も加わった。

 衝突被害軽減ブレーキの応用技術として、車間距離を自動制御可能なクルーズコントロールなど、運転支援機能も充実している。衝突被害軽減ブレーキと運転支援機能の進化は特に著しい。

 ヤリスに1.5Lのノーマルエンジンを搭載する「G」の価格は175万6000円だ。「ハイブリッドG」は213万円になる。

 ヴィッツと同等のグレード同士で比べると、ヤリスは約25万円高いが、先進の安全装備に加えてディスプレイオーディオや通信機能も標準装着される。機能や装備と価格のバランスでは、今のヤリスが明らかに買い得だ。

 ヤリスは競争の激しいコンパクトカーとあって、進化の度合いが大きい。後席や荷室の広さに不満がなければ、推奨度の高い車種となっている。

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