スズキとダイハツが同じユニットを使う!? スズキの軽ハイブリッド戦略はどうなる?

HV化することで価格が上昇し、軽自動車200万円時代になる?

マイクロハイブリッド搭載車の価格は、ハスラーハイブリッドXが151万8000円、スペーシアハイブリッドXが152万4600円。フルハイブリッドに変更すると、この価格に23万円ほど上乗せされると見込まれる
マイクロハイブリッド搭載車の価格は、ハスラーハイブリッドXが151万8000円、スペーシアハイブリッドXが152万4600円。フルハイブリッドに変更すると、この価格に23万円ほど上乗せされると見込まれる

 いわゆるマイルドハイブリッドでは、モーター機能付き発電機が減速時を中心とした発電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援を行う。

 モーターの最高出力は、スズキの場合で2.6~3.1ps、最大トルクは4.1~5.1kg-mだ。燃費向上率はワゴンRで触れた通り3%だから、このシステムだけで2030年度燃費基準に対応するのは難しい。

 しかしその一方で、フルハイブリッドにすると価格が上昇する。フィットのe:HEV(ハイブリッド)は、複雑な機能を採用しながら、トヨタのハイブリッド車に対抗すべくNAエンジン車との価格差を少額に抑えた。それでも約35万円に達する(トヨタは37万円前後が多い)。

 仮にNAエンジンとの価格差を30万円に抑えたとしても、実質的に約7万円が上乗せされるマイルドハイブリッドに比べて、フルハイブリッドの価格はさらに23万円高い。マイルドハイブリッドのハスラーハイブリッドX(151万8000円)に、23万円を加えてフルハイブリッド化すれば174万8000円だ。

 この価格はスペーシアギア・ハイブリッドXZターボ(176万4400円)と同等になる。燃費数値も向上するとはいえ、2030年度燃費基準を達成するために、ハスラーの価格が、広い室内とスライドドアを備えるスペーシアギアのターボ車と同程度まで高まってしまう。これでは辛い。

 軽自動車にとって、NAエンジンに比べて30万円、マイルドハイブリッドと比較しても23万円という価格上昇は、価値観を変えてしまうのだ。

 それならどの程度の価格上昇が限界かという話だが、10万円を引き下げて、NAエンジンに比べて20万円、マイルドハイブリッドとの比較で13万円という価格上昇だろう。

 ハスラーハイブリッドXであれば、13万円を加えると164万8000円だ。この価格はハスラーハイブリッドXの4WD(165万2200円)とほぼ等しい。マイルドハイブリッドが4WDの価格でフルハイブリッド化できるなら、一般的な感覚として何とか納得できる。

 問題は10万円を引き下げる価格差の捻出で、単純なコストダウンだけでは難しい。従来の燃費向上と同様、さまざまな効率化や節約を積み重ねる必要がある。まずはハイブリッドシステム以外の改善だ。エンジンやCVT(無段変速AT)などの摩擦低減、空力特性の向上などが考えられる。

 本来なら軽量化も大切な燃費改善対策だが、アルトの件で触れた通り、2030年度燃費基準も従来と同じく車両重量と燃費数値とのバランスだけで決められている。同じサイズのクルマでボディを軽くしても、その分だけ燃費基準値を引き上げられてしまう。

現行アルトの車重は650kg、WLTCモード燃費は25.8km/L。パワートレインはガソリンのみ
現行アルトの車重は650kg、WLTCモード燃費は25.8km/L。パワートレインはガソリンのみ

 話の本筋から脱線するが、燃費基準の一番の問題点はここにある。極端な話、車両重量が820kgのハスラーをオールアルミボディで造り、170kgの軽量化を達成しても、同じ650kgのアルトと同列に判断されるだけだ。軽量化の努力はまったく報われない。

 本来ならば、従来型と比較した時の燃費向上率、車体容積とのバランスなども考慮して燃費基準を決めるべきだが(海外にはフットプリント:トレッド×ホイールベースを基準に決めるケースもある)、実際はそうなっていない。環境/燃費性能を向上させる王道ともいえる軽量化が、評価の対象に含まれないのは疑問だ。開発者のモチベーションを削ぐ悪影響も生じる。

 話を戻すと、メカニズムやボディの抵抗軽減や効率向上に加えて、装備やシートアレンジを抑えることも考えたい。今ではシートアレンジがシンプルな軽自動車は、全高を1550mm以下に抑えたアルトとミライースが中心だが、背の高い車種に適用しても良いだろう。

 室内を狭くすると窮屈になるから購入対象からはずれるが、広さは変えずにシートアレンジや快適装備をシンプルに抑えたグレードも用意する。ハイブリッドのコストアップをシートアレンジや装備の節約で吸収する発想だ。

 エンジン排気量の拡大も考えられる。開発者によると「今の軽自動車の車両重量では、排気量を800cc前後に拡大すると、最も優れた効率を得られる」という。

 660ccでは車両重量に対して排気量が過度に小さく、燃費を悪化させている。そこで排気量を拡大してエンジンの負荷を減らすと、比較的シンプルなハイブリッドシステムでも2030年度燃費基準を達成しやすくなる。

 ただし排気量の拡大は、慎重に行わなねばならない。軽自動車税の増税も一緒に実施される可能性が高いからだ。排気量を拡大してハイブリッドのコストを低減できても、軽自動車の税金が高まったのでは意味がない。税金を据え置いて、排気量を拡大する必要がある。

 逆の対策としては、2030年度燃費基準を達成するために高まった価格を、軽自動車関連の税金を値下げして相殺させる方法もある。2019年には自動車税を値下げしたのだから、2015年に値上げされた軽自動車税を改めて値下げしても良い。

 それでもハイブリッド化による価格上昇を一気に取り戻すことはできないが、長く所有していれば、燃費の向上と相まって少しずつ割高感が解消される。逆に避けたいのは補助金の交付だ。短期間で終わり、将来的には割高感が生じてしまう。

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