先日、いわゆる「池袋暴走事故」に関する第5回目の裁判が開かれた。
検察側はこれまでと同じように「(事故の)原因は、アクセルとブレーキの踏み間違い」としているのに対して、被告人弁護側は経年劣化によって「電気系統のトラブルでブレーキが効かなかった可能性は否定できない」と訴えている。
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「アクセルとブレーキの踏み間違い」という事故原因の分析には、EDRと呼ばれる事故記録装置が大きく役立っており、これは今日のほとんどの新車に装備されている。
被告人弁護側は、クルマの側にトラブルが発生したとの主張を続けているが、果たして事故記録装置のデータが誤りである可能性はあるのか? 日本に数少ないEDRの認定資格「CDRアナリスト」で、レーシングドライバーの松田秀士氏が解説する。
文/松田秀士 写真/Bosch、TOYOTA、編集部
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そもそもプリウスは故障時でも“フェールセーフ”がかけられている
事故車両は2008年製のプリウス。ご存じのとおりプリウスはハイブリッド車。
ハイブリッドは、「回生協調」といって、ブレーキを踏んだ時にメカニカルなブレーキだけで制動するのではなく、発電機を回してエネルギーを回収してバッテリーに蓄電する。その発電がクルマを減速させるのだ。
もちろん、急制動など状況に応じてメカニカルブレーキを作動させるようにもなっている。この制御はコンピューターによって使いわけられるのだが、万が一故障した時には、ブレーキペダルを踏み込んだ油圧がメカニカルブレーキを作動させるよう“フェールセーフ”がかけられている。
つまり弁護側の「電気系統のトラブルでブレーキが効かなった」とは考えにくい。
まず、検察側は、事故車に破損個所の復元応急処置をして走らせたところ、正常にブレーキが効いた。よってブレーキは故障していない。としている。
また、複数の目撃者証言からブレーキランプが点灯していなかった。この点においても試走でブレーキランプの点灯を確認し、ブレーキランプの故障もないとしている。後者のブレーキランプ目撃証言についてはあくまで証言である。ブレーキに故障がなかったとすれば、核心はブレーキペダルを踏んでいたのか? となる。
検察側の「アクセルとブレーキの踏み間違い」という結論からは、ブレーキは踏んでいなかったがアクセルは踏んでいた、あるいは何も踏んでいなかった。ということになる。
しかし、クルマは97km/hまで加速している。一般道でこの速度は加速しない限り記録されるものではない、異常である。
ここに弁護側の「経年劣化による電気系統のトラブル」とあるが、もしかするとその時だけ異常が発生してブレーキが効かなかった、という主張が通るものだろうか? その時だけの突発的異常があったとすれば、それをどのように証明すればよいのか?
コメント
コメントの使い方目撃証言では、ブレーキランプはフテントウ。スピードは加速している。加害運転者の証言はウソ=誤認です。
でスロットル開度はどうだったの?検察は確認したの?
EDRの記録時間5秒って短すぎじゃないかな?あと記録されたアクセル開度はどれくらいだったんだろ?フルブレーキと思って踏んだとしても素人はそう簡単にフルブレーキングはできないよ。5秒間100%で張り付いてたなら疑うのはまず電気回路のトラブルだろ。
情報は、ペダル→コンピュータ→スロットルやブレーキと伝わり、そしてEDRにはやはりコンピュータ→EDRと伝わるんでしょ。そうすると、ペダル→コンピュータの回路か、コンピュータそのものかが狂っていれば、EDRにも狂ったデータが記録されます。EDRがペダルから直結の独立したデータ入力経路を持っているのでなければ、EDRの記録が決定的な証拠だなんてことは言えないはずです。素人の率直な疑問。