【池袋暴走事故】事故記録装置で判明した“踏み間違い”は100%正確!? 誤データ「あり得ない」 認定アナリストの眼

【池袋暴走事故】事故記録装置で判明した“踏み間違い”は100%正確!? 誤データ「あり得ない」 認定アナリストの眼

 先日、いわゆる「池袋暴走事故」に関する第5回目の裁判が開かれた。

 検察側はこれまでと同じように「(事故の)原因は、アクセルとブレーキの踏み間違い」としているのに対して、被告人弁護側は経年劣化によって「電気系統のトラブルでブレーキが効かなかった可能性は否定できない」と訴えている。

◆  ◆  ◆

 「アクセルとブレーキの踏み間違い」という事故原因の分析には、EDRと呼ばれる事故記録装置が大きく役立っており、これは今日のほとんどの新車に装備されている。

 被告人弁護側は、クルマの側にトラブルが発生したとの主張を続けているが、果たして事故記録装置のデータが誤りである可能性はあるのか? 日本に数少ないEDRの認定資格「CDRアナリスト」で、レーシングドライバーの松田秀士氏が解説する。

文/松田秀士 写真/Bosch、TOYOTA、編集部

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そもそもプリウスは故障時でも“フェールセーフ”がかけられている

2代目プリウス(販売期間:2003年~2011年/全長4445mm×全幅1725mm×全高1490mm)
2代目プリウス(販売期間:2003年~2011年/全長4445mm×全幅1725mm×全高1490mm)

 事故車両は2008年製のプリウス。ご存じのとおりプリウスはハイブリッド車。

 ハイブリッドは、「回生協調」といって、ブレーキを踏んだ時にメカニカルなブレーキだけで制動するのではなく、発電機を回してエネルギーを回収してバッテリーに蓄電する。その発電がクルマを減速させるのだ。

 もちろん、急制動など状況に応じてメカニカルブレーキを作動させるようにもなっている。この制御はコンピューターによって使いわけられるのだが、万が一故障した時には、ブレーキペダルを踏み込んだ油圧がメカニカルブレーキを作動させるよう“フェールセーフ”がかけられている。

 つまり弁護側の「電気系統のトラブルでブレーキが効かなった」とは考えにくい。

 まず、検察側は、事故車に破損個所の復元応急処置をして走らせたところ、正常にブレーキが効いた。よってブレーキは故障していない。としている。

 また、複数の目撃者証言からブレーキランプが点灯していなかった。この点においても試走でブレーキランプの点灯を確認し、ブレーキランプの故障もないとしている。後者のブレーキランプ目撃証言についてはあくまで証言である。ブレーキに故障がなかったとすれば、核心はブレーキペダルを踏んでいたのか? となる。

 検察側の「アクセルとブレーキの踏み間違い」という結論からは、ブレーキは踏んでいなかったがアクセルは踏んでいた、あるいは何も踏んでいなかった。ということになる。

 しかし、クルマは97km/hまで加速している。一般道でこの速度は加速しない限り記録されるものではない、異常である。

 ここに弁護側の「経年劣化による電気系統のトラブル」とあるが、もしかするとその時だけ異常が発生してブレーキが効かなかった、という主張が通るものだろうか? その時だけの突発的異常があったとすれば、それをどのように証明すればよいのか?

次ページは : あらゆる車の異常を解明できる事故記録装置「EDR」

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