トヨタは2021年の国内販売台数の見通しを昨年並みの150万台程度として、新型車攻勢でさらに売れゆきアップを図る計画だという。
2020年はコロナ禍のなかでヤリスクロスやハリアーといった新型車効果で売れゆきの落ち込みを最小限に抑えたトヨタ。
それでは2021年、トヨタは販売台数150万台を実現するためにどのような販売戦略を立てるのか? そして、2021年の新型車攻勢とはどのような車種の投入が予定されている?
2020年の販売状況を振り返るとともに、今年のトヨタの新型車攻勢の中身について深掘りしていきます。
文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ CGイラスト/ベストカー編集部
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■軽自動車販売が伸びているなかでトヨタが力を入れるのは?
国内における新車販売台数を振り返ると、1962年まではトヨタと日産がトップ争いをしていた。しかし1963年以降は、60年近くにわたってトヨタが1位を守り続けている。
2020年には、トヨタは約150万台(レクサスやOEM軽自動車を含む)を国内で販売した。2019年は約161万台だったから、コロナ禍の影響で2020年は7%減ったが、国内市場全体の新車販売では12%減少している。つまりトヨタは、コロナ禍による落ち込みが小さかった。
2020年のトヨタの国内シェアは、4輪新車市場全体では33%だったが、小型/普通車市場に限ると51%に達する。トヨタの国内シェアが小型/普通車では半数以上に拡大する理由は、今の国内市場では軽自動車が売れ筋になるからだ。
2020年は国内で新車として売られたクルマの37%が軽自動車であった。トヨタは軽自動車をほとんど扱わないため(ダイハツ製OEM車がトヨタの国内販売に占める比率は2%)、軽自動車を含めるか否かで、トヨタのシェアは大きく変わる。
ちなみに2020年のメーカー別販売順位は、1位:トヨタ(約150万台)、2位:スズキ(約63万台)、3位:ホンダ(約62万台)、4位:ダイハツ(約59万台)、5位:日産(約47万台)であった。スズキが初めて2位になっている。
また2021年に入ると、ホンダとダイハツも入れ替わった。つまりトヨタ/スズキ/ダイハツ/ホンダ/日産の順番だ。軽自動車の好調な売れゆきは、メーカー別販売ランキングにも大きな影響を与えている。
この軽自動車主体の販売状況は、小型/普通車が中心のトヨタにとって、好ましいものではない。軽自動車の1位は、トヨタの完全子会社になるダイハツが守り、トヨタは小型/普通車の需要を確保する必要がある。
■2021年は売れ筋のSUVラインナップを強化する
そこで2021年のトヨタは、コンパクトなSUVに力を入れる。日本の使用環境に適した人気のカテゴリーで、最も売れゆきを伸ばしやすいからだ。
トヨタは2019年11月にコンパクトSUVのライズ、2020年8月にはヤリスクロスを加えてヒットさせた。ライズは2020年に小型/普通車の最多販売車種になっている(日本自動車販売協会連合会のデータではヤリスが1位だが、SUVのヤリスクロスも含まれ、別々に算出すればライズが1位)。
ヤリスクロスも2020年11月以降は1カ月当たり9000~1万台を登録している。2021年には、さらにカローラのプラットフォームを使ったSUVの「カローラクロス」も加わる。
カローラクロスは2020年7月にタイで初公開された。ボディサイズは、全長:4460mm、全幅:1825mm、全高:1620mmとされ、C-HRよりも少し大きい。ホイールベースは2640mmだから、同じプラットフォームを使うカローラセダン&ツーリング、C-HR、レクサスUXと等しい。
カローラクロスの車内の広さなどは、基本的にC-HRとレクサスUXに近い。広々感はないが大人4名の乗車は可能で、C-HRやレクサスUXに比べると悪路指向を少し強めている。
このようにトヨタがSUVを豊富に用意する理由は、売れ筋のカテゴリーで、なおかつSUVに多様性があるからだ。前輪駆動の乗用車用プラットフォームを使っても、ハリアーのようなシティ派と、RAV4のような悪路も視野に入れたラフロード派に作り分けられる。
そこでトヨタのSUVラインナップを整理すると以下のようになる。
最近は各メーカーからシティ派SUVが数多く投入されて、それが少々飽きられてきた。そこで外観を野性的に仕上げ、悪路走破にも配慮したラフロード派が注目されている。
カローラクロスも、人気の高いライズとRAV4の流れに沿ってデザインされ、同サイズのC-HRに比べると息の長い人気車になる可能性が高い。トヨタは同じサイズで複数のキャラクターが成立するSUVの特徴を生かして、車種を充実させる。
■上質なコンパクトハイブリッド車としてアクアが一新!
軽自動車人気にストップを掛けるコンパクトカーとしては、次期「アクア」も注目される。2011年に現行アクアが登場した頃は、ハイブリッドが珍しい存在で、外観を見ればスグにわかる「ハイブリッド専用車」には一種のステイタスがあった。
アクアは2013年から2015年に、軽自動車を含めた国内販売の総合1位になったが、今は順位が下がった。
ヤリスハイブリッドを筆頭に、ヤリスクロス、シエンタ、C-HRなど、コンパクトなハイブリッドが増えたからだ。アクアの販売ランキング順位は、パッソなどと同等の中堅レベルになった。
そうなるとアクアの使命は終わったと見ることもできるが、2021年には次期型にフルモデルチェンジする可能性が高い。アクアはコンパクトハイブリッドカーとして多くのユーザーに知られ、膨大に売れたから、次期型が登場すれば乗り替え需要も期待できるためだ。
そしてヤリスハイブリッドは実用指向だから、内装の質感などが特に高いとはいえず、後席と荷室は狭い。そこでヤリスハイブリッドと基本機能を共通化しながら、質感や居住性を向上させた次期アクアを導入する。
ボディは小さくしても、質感は下げたくない上級車種からのダウンサイジング需要、あるいはヤリスクロスのようなコンパクトSUVが好みに合わない個性的で上質な小型車を求めるユーザーに対応する。
今はハイブリッドが珍しい存在ではないが、環境意識の向上で改めて注目されている面もある。そこでアクアをコンパクトハイブリッドのスペシャルティカーに位置付ける。将来的にはプラグインハイブリッドを用意する可能性もある。
■ヴォクシー/ノア/エスクァイアも年内フルモデルチェンジの可能性大!
トヨタを含めて、各メーカーが悩んでいるのはミニバンの商品開発だ。SUVと違って国内市場が中心の商品だが、今は少子高齢化の影響で、ミニバン需要は先行きが不透明だ。
そこでトヨタはエスティマ、アイシス、ウィッシュなどを廃止した。今ではヴォクシー/ノア/エスクァイアも設計が古くなっている。
それでもこのミドルサイズ3車種は、ミニバンの主力商品で売れゆきも堅調だ。2020年にはヴォクシー:6万9517台、ノア:4万5434台、エスクァイア:2万6368台が登録され、合計すれば14万1319台に達した。
国内販売1位になるライズ(前述のとおりヤリスとヤリスクロスを別々に算出するとライズが1位)の12万6038台を超える。1カ月平均で1万2000台近い売れゆきだから廃止するのは惜しい。
そこでフルモデルチェンジを行うが、今はトヨタの全店で全車を売るため、取り扱い車種の区分に対応した姉妹車は必要ない。ルーミー&タンクがルーミーに統合されたように、合理的に考えれば1車種に絞られる。
ただしヴォクシーとノアの売れゆきは今でも互角に近い。ヴォクシーは今では標準ボディを廃止してエアロパーツを装着したグレードのみを扱うが売れゆきは根強い。販売店でも「ヴォクシーとノアは売り分けができている」という。
そうなると3ナンバーサイズのエアロ仕様はヴォクシー、5ナンバーサイズの標準ボディはノアという区分になる可能性もある。販売が低調なエスクァイアは廃止して、上質な内外装などの特徴はノアが継承する。
プラットフォームは現行型で刷新されたので、新型も踏襲する。安全装備や運転支援機能の進化がフルモデルチェンジの注目点だ。ノーマルエンジンとハイブリッドシステムは、レクサスUXなどと同様、2Lエンジンを組み合わせたM20A型に刷新される可能性もある。
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