元陸上自衛隊の幹部で、東日本大震災など災害対応の経験が豊富な二見龍氏。近著の『自衛隊式セルフコントロール』では、日常生活から災害対応まで幅広く役立つ自衛隊のノウハウが盛り込まれており、「目からウロコ」「すぐに実践できる」などと非常に好評だ。
突然の大きな地震といった災害の場面はもちろん、日常生活や仕事で予期せず追い詰められ、頭の中が真っ白になってしまう、という経験はないだろうか。今回はパニックから最速で回復できる方法を指南してもらった。
『自衛隊式セルフコントロール』はこちら
文/二見 龍(ふたみ りゅう) 写真/写真AC
■大きな声や緊張が判断をミスリードする
怖くなったり、パニックになったりすると「ワー」という大きな声を出したり、怖さを紛らわすため、何かを話したりしないと心がもたない状態になる人がいます。こういう状態の時は、心の中も荒れた海のようになっているため、周りが見えなくなってしまっています。
危険をすばやく察知するには、心の中を静かで波ひとつない湖面のようにしておく必要があります。まず落ち着きを取り戻すことに集中しましょう。心が落ち着いたら、周りを確認し、一番危険であると感じたものから対処します。
大きな声を出して、パニックを起こしてしまうと、リーダーの判断を狂わせ、自分はもちろん、仲間も危険な状態に陥らせることになりかねません。さらに、なんでもない人までもつられて心を乱してしまう可能性があります。まず、落ち着くことから始めて下さい。「落ち着け! 落ち着け!」、「考えろ 考えろ」と思考を切り替えることが必要です。
■もしも頭の中が真っ白になったら
追い詰められた状態でも、多少なりとも余裕があれば、まだ自己コントロールを効かせられるかもしれません。しかし、もっと追い込まれてしまったら……。
たとえば仕事のシーンを思い浮かべましょう。あれもこれも最優先で! 一度に多くのことをやらなくてはならない状態に陥ったりした時には、頭の中が真っ白になってしまいます。普通なら、もうお手上げの状態です。その状態が収まり、思考が働き始めるまではどうしようもなくなります。
自衛隊で訓練を行っている時にも、このように頭の中が真っ白になることがあります。しかし、頭の中が真っ白になり、フリーズしてしまうということは、戦闘ではそのまま死を意味します。そのため、このような危険な状態からいち早く回復する方法を身に付けます。
頭の中が真っ白になってしまうのは、脳が処理できる量を超えた情報が入ってきて、パンクしてしまっている状態です。特に、至近距離で短時間に対応しなければならない事柄が複数発生すると処理能力を超えやすくなります。
■もっとも危険なものとは何か?
回復方法としては、目の前の一番危険なものから対処していきます。一番危険なものが排除できれば、時間の余裕が生まれ、情報量を大幅に減少させることができます。次に2番目、3番目というように順番に片づけていくうちに、脳の情報処理能力が整理され、真っ白な状態から元の状態に戻り、思考が徐々に回復していきます。
会社であれば、最初に対処すべき重要なことといえば、社員の安否、会社の威信の失墜、財務状況の急激な悪化などが考えられるでしょう。
また、個別の業務や日常生活のなかで、上司や顧客から無理難題を言われ、頭が真っ白になってしまった場合には、一度間合いを切ってしまうことが大事です。深呼吸などをして、振り切れてしまった思考の回復を待ち、対応要領について考えられるようになってから、再開すべきでしょう。
「検討の上、回答致します」というように、所用を理由に状況を一度切り、再チャレンジする方法が有効です。ここで切り返すことができないと、より深手を負うことになります。
コメント
コメントの使い方