■筆者の心に刻まれた足まわりの“シーマ現象”
もうひとつ私が忘れられないのは、初代シーマの直進安定性の低さだ。シーマで鈴鹿サーキットまで往復したが、とにかく真っすぐ走ってくれない。ステアリングのセンター付近が非常に曖昧で、常に修正を続ける必要があり、本当に疲れた。ベースになったY31型セド/グロはそんなことはなく、この直進性の低さは、シーマだけの現象だった。
サスペンションは基本的にY31セドリック/グロリアと共通だが、当時の記述によれば、「車両全幅の拡大に合わせたトレッド拡大と、バネ定数・ダンパー減衰特性のチューニング、ターボ仕様へのビスカスLSD標準装着などで、走行安定性を一段と向上させている」となっている。このトレッド拡大で、サスペンションジオメトリーが狂ったのだろうか? 当時、誰も文句を言う人はいなかったが……。
255馬力エンジンを積むグレードには、「ソフト/ミディアム/ハードに切り替え可能な電子制御エアサスペンションを搭載し、高級車にふさわしいしなやかな乗り心地を実現した」ともされていたが、基本的にサスペンションはかなりブワンブワンだったので、それが悪影響を及ぼした可能性もある。
この直後に日産は、「90年までに世界一のクルマを作る」という901運動が実現しはじめ、89年に発売された新型スカイライン(R32型)は、4輪マルチリンクサスペンションを採用。その効果は絶大で、操縦性も直進性も劇的に向上したが、初代シーマは、高速道路で真っすぐ走るのも難しいクルマだった。
もちろん、そんなのは今となってはどうでもいいことだ。初代シーマはそれまでの国産車の常識をブッ壊した傑作であり、欠点も含め、歴史的な名車と言えるだろう。
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