水素モビリティの開発も継続
いっぽう、水素モビリティに関しては、バイエルン州政府が850万ユーロ(約11億円)を投じる「バイエルン・フロッテ」計画への参画を表明。トレイトングループがBEVに注力する方針を示しているのでやや意外だが、フラスカンプ氏は次のように話している。
「トレイトングループはバッテリー電気駆動に焦点を当てています。水素に関しては2030年以降に充分なグリーン水素が供給され、充分なインフラが整備されれば、一部の領域で水素トラックが活躍すると思っています。私たちが水素の研究を継続し、バイエルン州とともに経験を積み上げていく理由はそのためです」。
(「グリーン水素」とは、製造工程においても二酸化炭素を排出することなく、再生可能エネルギーを利用して製造した水素のこと)
「バイエルン・フロッテ」は、州政府が独自の水素戦略とその能力を検証するための研究プロジェクトで、マンはボッシュ、フォーレシア、ZFなどのメーカーと共に水素燃料電池(FCEV)トラックを開発する。
このトラックは2024年の中ごろに顧客(BayWa, DB Schenker, GRESS Spedition, Rhenus Logistics, Spedition Dettendorferの5社)のもとに届けられる。それぞれの会社は1年間の実運用を通じて水素トラックを試験する。
BEVとFCEVは技術的には共通する部分も多く、特に電動モーターなどの駆動系は同じ。マンはBEVを基礎技術とし、将来的に使用される可能性のある水素パワートレーンをその上に構築することを考えている。重量の嵩むバッテリーの代わりに軽量な水素タンクと燃料電池を搭載する形だ。
現在、エネルギー量という点では水素のほうがバッテリーより優れているが、水素のコストは予測可能な未来においても明らかに高い。走行距離が長い商用車にとってエネルギーコストは最も重要な要素となる。
エネルギーの媒体としての水素のもう一つの重要な側面は、輸送セクターで必要とされる充分な量のグリーン水素を確保できないという点だ。このため「水素社会」が実現するとしても、商用車ではなく製鉄や化学などの分野から利用が拡大することになる。マンがFCEVを2030年以降とするのはこのためと思われる。
ともあれ、ルドルフ・ディーゼル博士とともにディーゼルエンジンを実用化したことで知られるマンが、脱ディーゼルに向けてフルスロットルで突き進む現状に時代の変化を感じずにはいられない。
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