タイ、インドネシア、マレーシアのASEAN3カ国で人気となっている日本車!!

■ミニバンが人気のインドネシア

 インドネシアは、ASEANのなかで最も日本車メーカーシェアが高く、95%と言われている。また、MPV(ミニバン)3列シートで占められる特殊なセグメント市場となっている。MPVとはMulti-Purpose-Vehicleの略で、日本で言えばミニバンだ。

 さらに現地で販売されるSUVも半分くらいが3列シートとなっており、大人数での移動に適した車種に人気が集まる。

写真は2代目のダイハツセニア。2021年11月からは3代目にバトンタッチした。車両寸法は4395 ×<br>1730 ×1700mmで7人乗りだ。トヨタではアバンザという名前で売られている
写真は2代目のダイハツセニア。2021年11月からは3代目にバトンタッチした。車両寸法は4395 ×
1730 ×1700mmで7人乗りだ。トヨタではアバンザという名前で売られている

 なぜ、インドネシアで3列7人乗りが売れるのだろうか?

 理由のひとつ目には、大家族主義の伝統が挙げられる。インドネシアでは、会食等で親戚も含めた家族・親族で集まる習慣が強く残っている。そうした際に親戚も含めて乗るために多人数乗りのクルマが必要となる。

 ふたつ目として、家族の平均構成員数が、日本では 2.5 人に対してインドネシアは4.0 人と多く、また運転手やメイドや子守も同乗するため7人乗りが必要となるといわれる。自動車を保有している高所得世帯はメイドや子守が必ずいるといわれている。休日には家族みんなで一緒にショッピングに出かける。

 3つ目は、故郷に帰省する際に大量の荷物を積むためのスペースの必要度が高いためと言われている。ラマダン(イスラムのお正月)などには、田舎の両親や親戚にジャカルタからたくさんのお土産を乗せて帰省する。

 4つ目は、車体サイズの大きいミニバンを保有することが社会的ステータスの高さを示すという認識が長い間に渡って定着しているからだ。インドネシアでは国民車と呼ばれたベストセラーカーのトヨタのキジャンがある。

 1970 年代後半にアジアカーとしてキジャンを開発したが、3代目から3列シートになった。インドネシア社会に3列シート7人乗りの車を定着させるうえで強い影響を与えた。

 そのため一定の所得を超えた人々はミニバンを購入することによって、自らのステータスの高さを誇示する。さらにインドネシア人の気質で、「人が買っているものを買う、人が見ているものを見る」と流行に乗りやすい傾向も起因している。コロナ禍以降、シェアは減少ぎみだが、3列シートのMPVシェアは40%弱。変わらぬ人気を保っている。

■国産車メーカーが覇権を握るマレーシア

 マレーシアでは国産車メーカー(プロドゥア、プロトン)のシェアが約半分を占めている。日系メーカーはホンダ、トヨタと続き、純粋な日系メーカーシェアはタイやインドネシアに比べると低く40%ほどとなっている。セダンに根強い人気があり、特にマレーシア国産車メーカーの小型セダンシェアが高い。

 1980年代始めに国民車プロジェクトが打ち出され、マレーシア国産車を中心とした自動車産業の発展があったという点で他国と異なる。長年の保護主義(ブミプトラ政策)を背景に、マレーシア国産車育成・保護のための各種奨励策があった。自動車の取得を積極的に奨励したことで一気に自動車市場が拡大。

 具体的に、外資メーカーの組み立て部品には40%の関税がかかるが、国産車メーカーのものは関税免除。さらに官公庁での優先購入、公務員への低金利ローン、1500ccクラス以下の減税など手厚い保護を受けて小型セダンを生産するプロドゥア、プロトンのシェアは拡大した。

写真はマレーシア国産メーカーのプロドゥア。写真手前3台は左から、ミラ、ブーンルミナス、ブーンの姉妹車種だ。ライバルのプロトンは基本的に三菱自動車だが他社の血も混じる
写真はマレーシア国産メーカーのプロドゥア。写真手前3台は左から、ミラ、ブーンルミナス、ブーンの姉妹車種だ。ライバルのプロトンは基本的に三菱自動車だが他社の血も混じる

 小型車が好まれる理由は手頃な値段だからだ。特に国産車メーカーのクルマは相対的に安い価格を維持。また、自動車ローンも最長9年まで組むことが可能で、ほかのASEAN各国に比べてローンも活用しやすく、低所得者層も購入することが現実的となっている。

 ASEAN自動車市場は、日本と異なり今後も拡大していくことは間違いない。しかし、ASEANをひと括りにすることは難しい。各国の文化、生活、考え方などにより売れ筋モデルがまったく異なる。それぞれの国を深く理解し、各国の嗜好性にマッチした自動車を投入していくことが必要となることは間違いない。


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