ガソリンや輸入車だけじゃない!? タイヤも銀歯もパスタも…!! なんでもかんでも大幅値上げの切ない理由

原油価格が上がれば、すべてのエネルギーが高騰する

ガソリンや輸入車だけじゃない!?  4月からはタイヤも大幅値上げ、その理由とは?
今年の2~3月からは航空機の燃料サーチャージ料金もアップ。3年振りの高い水準まで引き上げられた。ANAの4・5月の欧米路線の燃油サーチャージ料金はなんと1万9900円

 昨年11月、第二波であるオミクロン株が発生したが、その不安感が収まると、世界の経済はさらに活発化し、原油在庫とその供給が明らかに足りない状態に陥った。しかし中東の国々は、やはり原油を増産しようとしない。

 ご存じのとおり、原油からはさまざまなエネルギーが生産されている。

 クルマを動かすガソリン、ヒトや物資を輸送する飛行機の燃料である軽油、暖房に使用される灯油、家庭でも使用されるLPガス、物流のカナメである船舶や火力発電に使用される重油、さらにプラスチック製品も原油から作られている。

 つまり原油価格が上がれば、あらゆる製品を造るための原材料費、光熱費、輸送費が上がり、それは製品価格に反映される。いま、世界中で物価が上がっている主要因はここにある。

「原油」だけでじゃない!「天然ガス」も「石炭」も

 2月24日、ロシアがウクライナに攻め込むと、原油価格はさらに上昇。今年3月にはNY原油先物価格が130.50ドルという高値を記録した。

 原油だけではない。ロシアの原油の生産量は世界第3位、天然ガスは2位、石炭は6位(すべて2020年)である。そうしたロシアに対して欧米各国は今、経済制裁を仕掛けている。この莫大なロシア産エネルギーを世界市場から締め出すことによって、今後さらに世界的なエネルギー不足とその高騰が加速するに違いない。

 特にドイツの場合、石油の国内消費量の約35%、石炭の約50%、天然ガスの約55%(JETRO短信)を、ロシアからの輸入に頼ってきた。それを他国からの輸入に切り替えようとしている。パイプラインで送られてくる天然ガスの供給を、他国からの船舶輸送に切り替えればコストが増大し、ドイツ車だけでなく、欧州の工業製品の平均価格が大幅に上昇するだろう。

クルマの原材料も続々と価格上昇

ガソリンや輸入車だけじゃない!?  4月からはタイヤも大幅値上げ、その理由とは?
ニッケルの生産量においてもロシアは突出し、世界の約13%を占める。そのためクルマ用のバッテリー価格にも3月初旬から大きく影響。流通量も減退している

 ロシアに対する経済制裁はエネルギーだけでなく、金属類の高騰も招いている。クルマの車体にも使用されるアルミニウムは、ロシアのルサール社が世界の年間生産量の5.6%(2021年)をたった1社で占めている。

 パラジウムはクルマの排気ガス中の有害物質を取り除くための触媒としても使用される貴金属だが、これも世界における生産量の43%をロシアが占め、その相場は今年1月以降、劇的に上昇している。

 バッテリーに使用されるニッケルのロシアの生産量は世界の13%。その供給不足により、3月初旬にはその市場価格が10倍近くに跳ね上がった。

 テスラのCEOであるイーロン・マスク氏は3月13日、自身のツイッターに、「テスラは原材料と物流面で大きなインフレ圧力に直面している」と投稿。それがウクライナ戦争に起因していると示唆した。そこには世界の需要の急速な高まりに対応できてない船舶輸送の混乱と、新造のコンテナ不足も影響している。

 原材料費が世界的に上昇している今、日本の国産車の一斉値上げもすでにカウントダウンに入っていると言えるだろう。

さらに日本を苦しめる「円安」のワケ

 世界的に好ましくないインフレが進むなかで、日本ではさらに「円安」が重く圧し掛かる。輸出入の多くはドルで決済されている。つまり円安ドル高の状況下では、エネルギー、原材料、部品などの輸入価格が、すべて上昇することになる。

 円安の原因はいくつか考えられるが、ひとつは日米の金利差の拡大だ。インフレ状態にある米国では、中央銀行であるFRBが金利を上げ、健全でないインフレを抑制しようとしている。

 一方で日本は、超低金利政策を依然として続けている。その結果、日米の金利差は広がる一方だ。

 「金利の高い国の通貨が買われる」という一般的な定理がある。もしあなたが「年利2%の米国の口座」と、「年利0.002%の日本の口座」を自由に選べるなら、どちらを選ぶかと問われれば、その答えは米国口座であり、世界中の投資機関が同様な選択をしている。これは国債も同じこと。その結果、世界中がドルと米国債を買い、円と日本国債を売っている。

 また、原油高によるドル価格の上昇も、円安ドル高を加速させている。原油価格とドル価格は相関関係にあるので、原油価格が上がればドルも上昇するのだ。

 さらに、日本は高騰したエネルギーを大量に海外から輸入しているが、その決済はドルで支払われる。つまりそれは、支払いに必要なドルを買って、その対価として円を売ることを意味している。その購入額が莫大なため、これら取引によっても円安ドル高が促進されている。

次ページは : 日米の金利差を容認する日銀の謎

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