F1 開幕3戦で見えたレッドブルRB18の問題点。このマシンになにが起こっているのかを検証した

レッドブルRB18は全チームのマシンの中で一番重いのはなぜか?

すでに2戦もリタイヤしているマックス
すでに2戦もリタイヤしているマックス

 さらにレッドブルはオーバーウエイト、つまり車体重量が重いことが指摘されている。ライバルたちよりも10kg以上も重い、なんて話も聞こえてくる。これが本当ならば、規則上可能な7kg程度のバラスト(前後の重量配分を変化させられる重し)も搭載出来ない事になってしまう。これは重配(重量配分のこと)をセッティングに活かせないということになるのだ。したがって軽量化は急務なのである。7kgの重配変化は加減速時の挙動に大きく影響するので、フェルスタッペンのドライブスタイルには欠かせないセッティングツールなのだ。

 軽量化への問題はおそらくサスペンションの構成が影響していそうだ。フロントをプルロッド化し、サスペンション構成パーツ(ロッカーやその他の内部構成パーツ)をモノコックの先端下部にまとめて搭載しているのだが、モノコック自体は昨年同様ハイライズモノコック。したがって全構成パーツはモノコック下端に集中しており、サスペンション剛性とモノコックの剛性を確保するには大幅に強化したトップバルクヘッドとセカンドバルクヘッドが要求され、そのためにバルクヘッド部は相当に重量が増したはずなのだ。

 レッドブル首脳が頭を抱えているのは、そのモノコックの軽量化自体が極めて難しく時間の掛かる仕事であることだ。バルクヘッドの改造はモノコックを再びクラッシュテストに掛けなければならず、簡単な作業ではない。さらにサスペンションジオメトリーもダイブとスクォートの動きが理想通りでない。この見直しが必要ならばモノコックからの改修が必要だ。

ホンダパワー頼りの速さを取り戻す事はできない

パワーアップしたフェラーリPU。レッドブルはホンダPU頼みでは勝てない
パワーアップしたフェラーリPU。レッドブルはホンダPU頼みでは勝てない

 今シーズンフェラーリが快調な出だしを見せているのは、一昨年、そして昨年を捨てて、開発のほぼ全てを今シーズンのマシン開発にあてたこと、そしてハスをも巻き込んで、総力戦での開発が功を奏したといえるはずだ。事実、開幕前テストからフェラーリF1-75はほぼでき上がっており、開幕戦から実にスムースにトップコンテンダーの位置を確保してしまったのだ。

 もちろんフェラーリは車体だけではなくPUも全力で開発を行い、今シーズン用のPUは30馬力近いパワーアップがあったはず、とは他メーカーのアナリスト達の言葉だ。

 しかしレッドブルのPUは昨年のホンダ、現在ではレッドブル・パワートレーンズの名前でこのPUを扱っている。もちろん現実には未だHRCの名のもとにホンダ・サクラでのトラブルシュート・メンテナンス、あるいは制限内での開発などが行われているのだが、昨年までのワークス体制は解除され、現実にはその規模は間違いなく縮小されているはずだ。

 現行でもまだHRC管轄としてホンダ体制は生きていて、現場スタッフもある程度係わっているはずだが、こうした規模縮小はレッドブルにとっては厳しい。しかも既にシーズンはスタートしてしまい、PUは全チームともホモロゲーション下に置かれ、もはやパフォーマンス開発は殆ど出来ないのが現実となってしまった。つまりフェラーリからのパフォーマンの遅れはPU単体ではもはや取り戻す事は出来なくなってしまったのだ。

 2021年のチャンピオン争いは、競い合った2チームに今シーズン大きな試練を与えたようである。

【画像ギャラリー】3戦中2回リタイア…レッドブルマシンに何が? オーストラリアGPを写真で振り返る(5枚)画像ギャラリー

津川哲夫
 1949年生まれ、東京都出身。1976年に日本初開催となった富士スピードウェイでのF1を観戦。そして、F1メカニックを志し、単身渡英。
 1978年にはサーティスのメカニックとなり、以後数々のチームを渡り歩いた。ベネトン在籍時代の1990年をもってF1メカニックを引退。日本人F1メカニックのパイオニアとして道を切り開いた。
 F1メカニック引退後は、F1ジャーナリストに転身。各種メディアを通じてF1の魅力を発信している。ブログ「哲じいの車輪くらぶ」、 YouTubeチャンネル「津川哲夫のF1グランプリボーイズ」などがある。
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