■高級車ならまだしも、わざわざ傘を入れるために……
3代目パルサー(1986年)の3ドアHBが採用したアンブレラポケットも面白い。ドア開口部のボディ側(ストライカー金具の上側)に穴が設けられ、専用の傘を収納できた。開発者は「仕込傘」と説明していた。今日のロールスロイスにも、ドアの部分に傘が内蔵される。ロールスロイスもパルサーの真似をしたのか!? シート関連も珍装備は多い。
2代目アルト(1984年)に用意された女性向け特別仕様車の麻美スペシャルには、回転ドライバーズシートが採用された。運転席が外側へ60度回転して、スカートを履いた女性が乗降しやすいと宣伝した。これは「男性開発者の考えた女性向けの装備」で廃れたが、似たような機能が今の福祉車両では普及している。

回転ドライバーズシート(1984年2代目アルト)。 2代目アルトに設定された女性向け特別仕様車に採用されたのが、この回転シートだ
■シートにも珍な工夫が凝らされていた
運転席では初代パジェロ(1982年)のサスペンションシートも印象に残る。運転席の下にスプリングが装着され、シートでもショックを吸収するものだ。ただし、これを作動させた状態でカーブに入ると、まずはボディが外側に傾き、続いて運転席が一層傾いた。運転席から滑り落ちそうになり、こりゃダメだと思った。

サスペンションシート (1982年初代パジェロ) シート下にスプリングが装着されており、オフロード走行時に使うとショックを軽減する
初代オデッセイ(1994年)の3列目シートに装着されたオープンベンチモードも面白い。リアゲートを開き、3列目シートを反転させるように後ろへ倒すと、外側(後ろ側)に向いて座ることができる。背もたれに腰かけるから、着座姿勢を含めて座り心地は悪かったが、ミニバンの世界観にはピッタリの装備だった。

オープンベンチモード (1994年初代オデッセイ) 床下収納3列目シートは、停車時にテールゲートを開けた状態で後ろ向きに座ることができる独創的なオープンベンチモードが可能
初代CR-V(1995年)では前後席をリクライニングさせ、さらに後席座面の後ろ側を持ち上げると、デコボコのないフルフラットなシートに変更できた。この時代のホンダは内装に工夫を凝らし、そのアイデアが今のミニバンやN-VANにつながっている。
ホンダにかぎらず、一見すると珍装備でも、時系列で見ていくと大切な役割を果たしているものが少なくない。失敗があるからこそ、成功して後のクルマ作りを大きく変える技術も生まれるワケだ。
■自動車珍装備11景
この後は、珍装備、アイデア倒れ装備をダイジェストでお届けする。あきれた、こんなものいらない、なんでこんなものを作ったの? と思う装備のオンパレードだ!

グラフィックモニター (1985年2代目ミラ) 上級グレードに設定された装備で、軽自動車初を謳った。今、タイヤがどんな角度になっているのか、クルマがどの方向へ進むのかをひと目で確認でき、クルマの進行方向と3段階に前輪タイヤの切れ角を表示する舵角モニター。駐車場や狭い路地での発進の際、誤操作を未然に防ぐための初心者向けの装備で、わかりやすい表示になっていたのがウリ

トラクションモニター (1986年2代目リベルタビラ) 前後輪の駆動配分を常時、モニターに表すための装置で、走行時のトラクション状況が前後のどちらにどれだけかかっているのかがひと目でわかるようになっていた。兄弟車の3代目パルサーと3代目ラングレーにも設定された

文字付きハイマウントストップランプ (1989年7代目ファミリア) 通常のストップランプ以外に「サンキュー」「どうぞお先に」の文字が表示された逸品

傘ドアポケット (1981年6代目スカイライン) 現在、ロールスロイスの各モデルのリアドアには傘が用意されており、その傘は1本10万円らしいのだが、今よりはるか昔、R30スカイラインにも傘入れ兼用のドアポケットがあったというのだから驚く。しかも傘から流れ出す滴が車外へ流れていくように設計者が工夫して開発していたのだという。2LのLグレー ド以上に標準装備されていた








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