アルファードなどグリルが大きい“ドヤ顔”車 なぜ急増? その思惑とメリット

軽自動車の大型メッキグリルにも理由がある?

写真は2011年発売の初代N-BOX「カスタム」。同車に限らず、タントやスペーシアなど売れ筋の軽には大型メッキグリルを採用したカスタム系グレードが設定され、人気を博している

軽自動車のメッキやクロームを多用した大きなグリルは、存在感を強めたいという意識が強いだろう。

従来、軽自動車は邪魔者扱いされる傾向にあった。軽自動車規格の枠組みの中で、限られた排気量によるエンジン出力によって、加速性能などが登録車に比べ不足するなどした経緯から、登録車や大型車に追い立てられたり、幅寄せされたりし、不安な思いをしてきた軽利用者も多いのではないか。

しかし、威圧感を伴う大きなメッキグリルを採用したドヤ顔になれば、軽自動車か登録車の小型車か見分けがつきにくくなる。それによって嫌がらせのような被害を受けずに済む安心がもたらされるだろう。

また、先の空気力学とは別に、軽自動車の人気がハイトワゴンに集中し、室内空間をできるだけ大きく確保しようとすると単純な四角い造形となり、輪郭の違いによって車種やメーカーの区別がつけにくくなっていることもある。そうした実用性を満たしながら、個性を出すにはやりフロントグリルを目立たせるしかなかったといえる。

しかしながら、今日のハイトワゴンが一様に大きなメッキグリルを採用するとなると、逆に目立たなくなり、どのメーカーのどの車種か区別がつきにくい事態にも陥っている。それが証拠に、乗用タイプの車種は個性豊かな様々な顔つきを持っているからである。

ハイトワゴンにも、新しい造形の発想が求められてきているのではないか。

大きいフロントグリルにメリットはあるのか!?

グリルで存在感を強調する高級車とは打って変わってグリルレスのフロントマスクを採用するテスラ モデル3

シングルフレームグリルに代表される大きなフロントグリルは、戦前の自動車の名残ともいえる。当時は実際に車体の前面にラジエターを取り付けていたので、それがクルマの顔となっていた。

また、性能競争のなかで、速さを競うには大排気量のエンジンを積むことになり、それに応じてラジエターも大型化したはずだ。

そうしたかつての伝統を現代に受け継ぐ発想が、大きなラジエターグリルにあるといえる。

しかし、今日ではラジエターの性能も高くなり、大きなラジエターグリルの存在がすべて機能しているわけではない。クルマの前面に大きな口を開け、大量の空気を車内へ導けば、それは大きな抵抗となるからだ。車体内部には、できるだけ空気を採り入れないのが、空気抵抗を減らす手段の一つである。そこで、高速走行ではグリルを閉じるグリルシャッターといった機能を持つ車種もある。

そのほかに、大きなフロントグリルの造形に縛られ、電動化の時代の顔を想像しにくくなっている現状がある。モーター走行に冷却が不要かというと、そうではない。モーターやバッテリーは、加速や高速走行で熱を発するので、そのための冷却が必要だ。とはいえ、エンジン車ほどの冷却性能は求められない。

そこで、テスラのような造形が生まれる。テスラも初期のモデルSでは、ラジエターグリルの面影とでもいうような顔つきだったが、その後は、モデルXやモデル3含め、グリルレスといえる顔つきとなった。しかし、電気自動車のテスラと明らかに分かる顔つきを手に入れている。

そのように、世界的に電動化が進む中、なお大きなラジエターグリルを象徴として残そうとする旧来の自動車メーカーの造形は、時代にそぐわないものとなっていく可能性がある。

すでに、エンジン車の冷却性能があれほど大きなラジエターグリルを必要としていないうえ、電動化されればますますかつての懐古としかいえない顔になってしまうのである。

そう考えると、いまの電気自動車に大きなラジエターグリルがエンジン車同様に残されたとしても、それは過渡的な造形でしかなくなるのではないだろうか。いつまでも大きなラジエターグリルに頼っていれば、いずれ時代遅れのブランドと意識されかねない。

また電気を使い、ほどよい心地よさの生活を好む時代となれば、必ずしも速さを追い求めた輪郭とは異なるクルマが社会に求められるかもしれない。
芸術作品ではなく工業製品である以上、電動化の時代へ向けて、カーデザインはまだ開拓の余地があるのだと思う。

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