2018年12月17日、ビッグマイナーチェンジしたプリウスが発売された。これまで不評だったピエロ顔が大幅に変更され、普通の顔になった。そのほか、専用通信機器DCMの標準装備や運転支援システムであるToyota Safety Senseの標準化。エクステリア、コネクテッド、安全性という3つが進化しているのだった。
どうしてこんなに気合いが入ったマイナーチェンジをしたかというと、かつてのような大ヒットからほど遠い販売にとどまっているからだろう。
プリウスといえば、過去10年間で6回も年間1位に輝いてきたのだが、2018年の1〜12月の販売台数を見ると、1位ノート(13万6324台)、2位アクア(12万6561台)、3位プリウス(11万5462台)と、7年前のアクアにも抜かれ、e-POWER効果のノートに2万台もの差をつけられている。
ではマイチェンによって販売台数が巻き返したのか? 2018年12月17日のマイナーチェンジモデルの発売から1カ月が経った2019年1月の販売台数を見てみよう。
1位ノート(1万1448台)、2位セレナ(1万110台)、3位アクア(8575台)、4位プリウス(8712台)と、2018年12月の順位4位から変わらず12月も4位のままだった。マイチェン効果がなかった、と結論づけるには時期尚早だが……。
ではマイナーチェンジ版プリウスに乗ってみてどうだったのか? 試乗したモータージャーナリストの国沢光宏氏が解説する。
文/国沢光宏
写真/平野 学
初出/ベストカー2月26日号
■ マイナーチェンジ前のモデルと走りはどう違う?
プリウスのマイナーチェンジを業界的に見ると、トヨタのさまざまな「最終防衛ラインがわかりますね」となります。そもそもプリウスというクルマ、もはやガンガン売ろうという気はなくなったようだ。
なにせ月間販売目標台数を、1万2000台から無理のない6600台に落としてきた。「この程度の台数であれば抜本的な変更や価格戦略の大きな見直しをしなくても売れる」という読みなんだと思う。
4代目プリウスはコンセプトから見誤ったのでいかんともしがたい、ということだ。
■プリウスマイチェンでここが変わった!!
●ヘッドライト形状、バンパー形状の変更によるフロントマスクのデザイン変更
●リアコンビランプのデザイン変更などによりリアスタイルの変更
●インパネ、コンソールトレイにブラック加飾採用
●15インチ、17インチともにアルミホイールデザイン変更
●コネクティッドサービスの標準装備
●トヨタセーフティセンスを全車標準装備
試乗してみると「マイナーチェンジ前のプリウスよりシャッキリしていますね」と好感持てるけれど、燃費や動力性能など基本的に同じ。投資が必要な変更は行っておらず。
当たり前ながら室内の狭さを変えることなどできない。とはいえ「便器みたい」と言われていた白い樹脂のセンターコンソールを黒くするなど、細部はけっこう変えています。
興味深かったのが安全装備に対する防衛ライン。アルファード、ヴェルファイアから始まった「夜の歩行者にも対応できる新世代」を採用するかと思いきや『歩行者(昼)』と書いてあるタイプに留めた。
マツダのように「すべての車種を最新スペックに」という防衛ラインは、プリウスのような量販車種であっても「築かない」ということでしょう。これがマイチェンプリウスで最も意外な点。
一方コネクティッドについてはマイナーチェンジモデルに投入してきたから面白い。トヨタの優先順位、よ~くわかります。ただコネクティッドについていえば、車内CANの情報がある程度必要。ハイブリッド系は驚くほどたくさんのデータを取っている。
ダイハツで生産しているような車種が使っている簡易なCANシステムの車種については、コネクティッド導入まで少しタイムラグあるんじゃなかろうか。
さて、今回の変更で最もチカラを入れたという前後のデザイン変更やいかに? 結論から書くと「酷いですね」が「あまり気にならなくなりました」という程度になったと思う。
これまた「積極的に攻めよう」というより「目立たなくします」というイメージ。みなさん「PHVをベースに変更すればよかったのに」と言うが、私もそう思います。クルマ好きから少し距離が開いたかもしれません。
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