タカラトミー CEO富山彰夫氏が語るホビーの価値 大人気シリーズ【トミカ】の将来とこれからの【アソビ】とは?

タカラトミー CEO富山彰夫氏が語るホビーの価値 大人気シリーズ【トミカ】の将来とこれからの【アソビ】とは?

 2024年、大人気ミニカーシリーズ「トミカ」を擁するタカラトミーの代表取締役社長 CEOに就任した富山彰夫氏。氏が思い描くトミカの未来、そしてこれからの「アソビ」について質問をぶつけた。

文・写真:大音安弘

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玩具の重要性に気づかせてくれた祖父の言葉

2024年6月にタカラトミー代表取締役社長 CEOに就任した富山彰夫氏。手に持っているのは、お気に入りの一台トミカ スカイライン シルエット
2024年6月にタカラトミー代表取締役社長 CEOに就任した富山彰夫氏。手に持っているのは、お気に入りの一台トミカ スカイライン シルエット

 2024年、原点である富山玩具製作所の創設から100周年を迎えた老舗玩具メーカーのタカラトミー。同社の代表作といえば、クルマ好きならば、一度は手にしたことのあるダイキャスト製ミニカー「トミカ」だ。子どもの手のひらに乗り、安全に遊べるミニカーの歴史は、なんと2025年で55周年を迎えた。

 代表取締役社長 CEOである富山彰夫氏は、創業者・富山栄市郎氏のひ孫にあたり、やはり幼少期からトミカにも親しんできた。

 当時のお気に入りは、1980年代にレースで活躍した「トミカ スカイライン シルエット」だそう。トミカに親しんだこともあって、現在、GRスープラを愛車とするほどのクルマ好きに。

 ただ当初はタカラトミーへの入社は考えていなかったという。転機となったのは大学3年生の頃に、トミーの会長(当時)、祖父の富山允就氏が病に倒れたことだった。

「肺がんで入院中の祖父が、ほぼ喋れない状況だったのに、呼び出した私に向かって必死に、『家業を手伝え!』と伝えてきたんです。その直後、祖父は亡くなってしまい、葬儀には多くの人が参列されました」

「そこで祖父と苦楽をともにしたOBからの激励などもあり、玩具メーカーという家業の重要性を感じたことが、入社を決めるきっかけとなりました」

 入社後は、経営企画や生産戦略、海外駐在など、さまざまな業務を経験。その経験で最も思い出深いのは、’20年~’23年の事業統括本部長時代という。

事業統括本部長時代に手がけた「ジョブレイバー」。ロボット好きにはたまらない逸品だ
事業統括本部長時代に手がけた「ジョブレイバー」。ロボット好きにはたまらない逸品だ

「当時、私自身もトミカの商品開発に携わりました。『紅の豚』や『となりのトトロ』などの『スタジオジブリ』作品とのコラボモデルは大変でしたが、思い出深いです」

「さらにトミカプレミアムの魅力を拡大しようとレーシングカーを展開した『Racing(レーシング)』シリーズや、『unlimited(アンリミテッド)』シリーズからBANDAI SPIRITSさんとのコラボによる『機動戦士ガンダム』のホワイトベースを商品化しました。幼い頃からロボットものが好きだったので、ガンダムとのコラボは、夢が叶った気分でしたね」

「実は子どもの頃、バンダイで働きたいって言っていたんですよ。それくらいロボットが好き。そこで、うちでも独自のロボットをやろうと取り組んだのが、働くクルマがロボットに変身するアニメ・玩具シリーズ『特装合体ロボ ジョブレイバー』でした。これが成功したのも嬉しかったですね」

トミカの「アソビ」と子どものクルマ文化

手に持っているのはご両親の結婚式の際に引き出物として配られたトミカセット。大変貴重な品です
手に持っているのはご両親の結婚式の際に引き出物として配られたトミカセット。大変貴重な品です

 2024年の社長就任時に掲げたのは、「タカラトミーをアソビメーカーに」というメッセージだ。「アソビ」には、どんな意味が含まれるのだろうか。

「今、自動車業界では、クルマの役割をモビリティ(移動手段)という言葉で表現しています。玩具も同様で、玩具自体はアウトプットのひとつであり、その裏にある遊びを作っているわけです」

「玩具とひと括りにするのではなく、子どもの扱いやすさや安全性など、さまざまな配慮をしたうえで作ることが大切」

「さらに子どもから大人まで、どういう遊びを体験するかまでを想像したうえで、我々が製品を送り出していることを伝えたかった。敢えて『アソビ』と表現したのは、私たちの企画開発段階から、クリエイティブマインドを大切にしており、そこから遊びが生まれていると考えています。それを表現するにはカタカナ表記が最適と考えました」

 富山氏の夢だったガンダムとのコラボトミカは、まさに、そんなアソビ心から生まれたのかもしれない。

 変化を恐れず魅力的なシリーズを増やし続けるトミカだが、55年もの間、愛されてきた秘密はどこにあるのだろうか。そこには、日本のクルマ文化が大きく影響していると指摘する。

「マイカーブーム直後の1970年に発売されたトミカですが、当時日本車の小さなミニカーを作る玩具メーカーはなかった。手のひらに乗るトミカは、子どもたちが手に入れられる憧れのマイカーとなりました。彼らなりのクルマ文化の楽しみ方になったのです」

「ただ大人と異なるのは、興味を持つクルマが異なること。彼らには日常で目にする、はたらくクルマが魅力的に映る。だから清掃車や救急車などの人気が高い」

「そして子どもたちの成長のなかでクルマの理解が深まると、スポーツカーなどにも興味を持っていく。それが個性豊かな多くのトミカを揃える理由です」

次ページは : 変わるトミカの役割とこれからの未来

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