鉄道でもバスでも乗車券はその形態を紙から磁気券、ICカード(チップ)、デジタル画面と進化し、現在はQRコード読み取り式に移行しつつある。航空の世界でも搭乗券は似たような変遷をたどっている。バスではまだマイナーな形態だが、鉄道では実証実験がスタートしている。バスの世界に浸透するのだろうか。
文:古川智規(バスマガジン編集部)
■最初の進化は紙から磁気券への変更だった
乗車券類は自動改札が登場するまでは紙に印刷されたものが主流で、偽造防止にはもっぱら地紋が使用された。自動改札機が登場すると磁気券に変わり、プリペイド式の磁気カードも登場する。
バスの世界では前売りの一日乗車券を中心にスクラッチ式やスタンプで日付を押印する定期券式が現在でも残るが、運賃箱から印刷して紙のカードが発行できるようになると、一気に磁気券発行まで技術が進んだ。
これは特に公営の事業者ではバス・地下鉄共通券として発売していたために、せめて地下鉄では自動改札が利用できるようにとバスでも磁気券を発行できるようにしたものだ。
そうして本命と思われたICカード乗車券が登場した。もちろん現在主流なので本命には違いはない。ICチップを内蔵したプラスチックカードに情報を書き込むことによりチャージや発売がICカードに直接できる。
券面に何も書かれていなくてもリーダーにかざせば書き込まれたデータにより改札完了し、電子マネーとしても利用できる利便性が好評だ。
■そして登場したのが超多機能なICカード
ICカード乗車券は定期券にもなり、記名式は再発行ができる等の機能満載で、学生証や社員証、クレジットカード一体型も登場して一人1枚以上の必需品になっている。
バスの運賃箱もICカード対応機器が主流になり、ICカード乗車券が全国で相互利用可能になると、どこの事業者のカードでも全国で運賃精算が可能になる。
ただし製造には紙券以上のコストがかかるのと、一般的なICカード乗車券にはデポジットが必要なので小銭要らずという点では便利だが事業者にとってはコストのかかるシステムではある。
とはいえ、現金代わりあるいは定期券としてのICカード乗車券や最近流行りのクレジットカードのタッチ決済は別物と考えてもよく、置き換わることはないだろう。