なにやらムカデのような巨大な「ヤツ」が静々と走ってくる。もの凄い数のタイヤ、タイヤ、タイヤ……!! 実にその数64本ものタイヤで支えている。
その名は 「スーパーキャリアⅣ」 という。
いったいナニモノ!? 見たところ運転席らしきものはない……。「オペレーター」と書かれたビブスを着けた傍らの人物がリモコン操作で動かしているのだという。

昨年9月のある日、午前0時過ぎの港区汐留地区で実施された首都高八重洲線の高架橋架設工事でのワンシーン。
八重洲線は新橋~汐留間を通行止めにした工事を実施していたが、この日は最後に残された北行き線の高架橋桁を架設する作業という、今回の事業のハイライトとも言えるものだった。
すでにでき上がった全長25・5mという長さの新高架橋桁は、架設地点から約50m程度離れた地点に「スーパーキャリアⅣ」の上に載せられて待機をしていた。ちなみにこの架設桁の重量は115トン。さらに仮設材10トンと合わせて「スーパーキャリアⅣ」には125トンの重量物が積載されている。

ドイツのゴールドフォファー社製の「スーパーキャリアⅣ」は、3軸車、4軸車、5軸車と3タイプの台車があり、これに6060㏄、250psを発揮するディーゼルエンジンを搭載した「パワーパック」を組み合わせて実際の運搬に使われる。
台車の組み合わせは自由自在で、運ぶ物の大きさや重量、また走行する場所の広さなどに応じて組み合わせて使用する。今回は5軸車と3軸車を組み合わせて8軸車として運用。これを2台並行に組み合わせることで125トンの高架橋桁を運搬したわけだ。
パワーパックの上には運転台を組み合わせることも可能だが、今回は外部からオペレーターがリモコン操作で動かすスタイルをとった。
パワーパックのディーゼルエンジンはもっぱら油圧ポンプを駆動する。タイヤの駆動や操舵、サスペンションの上下などはすべてこの油圧によって操作されることになる。
各タイヤはすべて単独でステア可能。油圧ホースが見えるだろうか!? 駆動力も油圧でまかなわれている。また、サスペンションは上下700mmの範囲で高さが可変。
圧巻なのは操舵時。8軸がそれぞれ独立して90度の角度までステア可能。例えばタイヤをすべて同じ角度にステアすれば斜め移動が可能だし、90度真横にすれば平行移動が可能。さらに各軸の相舵角を複雑に調整することでその場でクルリと向きを変える「スピンターン」や扇形に向きを変える動作なども可能。
これらの動きを駆使して狭い工事エリアをスルスルと動いて、あっという間に交差点内の架設地点に移動してしまった。タイヤの動きはすべてコンピュータ制御されているという。
また、油圧サスペンションは上下350㎜ずつ、700㎜の範囲で動くことが可能で、段差の乗り越えや最大4%の勾配でも台上を水平に保つことができるという。作業に当たっていた関係者に話を聞くと「今回の桁はまだ軽いほう。
400~500トン級の桁をもっと多軸状態で運搬することもしばしばある」とのこと。
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