2023年2月17日、講談社から「どんがら トヨタエンジニアの反骨」が発売された。
本書の主人公は、トヨタ「86」「スープラ」の復活を手掛けた元チーフエンジニアの多田哲哉氏。多田氏を中心に織り成すトヨタスポーツカーの復活、そして、自動車エンジニアたちの物語だ。どのような本なのか、見ていこう。
文/ベストカーWeb編集部、写真/講談社、TOYOTA
■トヨタスポーツカー復活へのエンジニア奮闘記がここに!
本書は、主人公であるトヨタ元チーフエンジニア多田哲哉氏を中心に、自動車エンジニアたちがスポーツカーの復活までの喜び、葛藤や、苦悩などがつづられている。
著者の清武英利氏が、4年間という歳月をかけ、多田氏含むトヨタ、スバル、マツダなどのエンジニアたち、その家族たちに取材を行い、全11章からなるノンフィクションだ。
このノンフィクションは、週刊現代にて連載されていた「ゼットの人びと トヨタ「特命エンジニア」の肖像」を大幅加筆され、ついに書籍化された。
トヨタの心臓部である愛知県豊田市トヨタ町に15階立ての技術本館、そして、Zという称号を持つエンジニアチームが主な舞台となる。
また現在の「トヨタ自動車」の基盤を作った自動車エンジニアたちの活躍もあり、本書の主人公である多田氏につながる大きな歴史の波を感じることができるだろう。本書に登場する人物が曲者たちばかりなのが面白い。
多田氏がチーフエンジニアとして、初めて手掛けたモデルは2代目ラウムだった。そして、ウィッシュのモデルチェンジ開発中であった2007年1月の終わりごろに、スポーツカー開発プロジェクトの打診が出された。
トヨタは、1999年から2007年まで発売されていたMR-S以降、新型スポーツカーの発表はなかった。そのようなか、商品開発部から「スポーツカー復活プロジェクト」が提案され、このプロジェクトの開始が商品企画会議にて決定されたという。
著者である清武氏の緻密な取材、そして多田氏たちの証言による、トヨタ「86」、兄弟車であるスバル「BRZ」が誕生するまでの5年間、そして「スープラ」の復活までをお送りする感動ノンフィクション作品だ。
本書では、多田氏の異例の経歴はもちろんのこと、人柄や、スポーツカーへの愛などを垣間見ることができる。また、スバル、マツダ、BMWのエンジニアたちの話も興味深いものだった。
特に、トヨタと他社との社風、エンジニアの立ち位置などの違いを1冊で読めるのは楽しい。また、自動車大国ドイツを取り上げる章は、日本との違いに驚く。本書は、300ページを超える長編であったが、あっという間に読むことができた。
自動車が好きな人、社会にて奮闘し続ける人や、これから社会へ歩む人たちに贈りたい1冊となるだろう。
■書誌情報
タイトル:どんがら トヨタエンジニアの反骨
著者:清武英利
出版社:講談社
ページ数:352ページ
ISBN:978-4-065311578
価格:1980円(税込)
コメント
コメントの使い方