構造的な非効率
トラックドライバーの生産性向上には、運送事業者だけでなくサプライチェーン全体で取り組む必要がある。特に発着荷主の協力は非常に重要だ。
また、運送業界の「多重下請け」という構造的な問題も指摘されている。荷主から元請事業者への運賃が適正に支払われていたとしても、そこから利ざやが引かれることで下請けの実運送事業者は充分な運賃を収受できない。
俗に「水屋」(見ず屋)と呼ばれる中間業者(貨物ブローカー)が介在することで帰り荷の手配などに役立つこともあるが、構造的に多重下請けが避けられず、実際に輸送業務を行なう事業者の運賃の低下を招いている。
このような構造は実運送事業者がわからなくなることでトラブル発生時の責任の所在が不明確になったり、ドライバーからは契約内容(付帯業務の有無など)が見えないなど、非効率な物流の一因にもなっている。
こうした商慣習の是正に向けて、3省は全日本トラック協会を通じてトラック事業者向けのアンケートを行なっているほか、荷主・実運送事業者・利用運送事業者に対するヒアリングを実施する予定で、4月を目途に調査をまとめることにしている。
ただ、現在のトラックの積載率は平均すると4割未満となっており、共同輸送による帰り荷の手配など積載率の向上を図る取り組みも必要だ。
物流の効率化のためには、パレット化も重要だが、国内ではパレットの標準化が進んでおらず、様々な規格のパレットが存在している。共同輸送などの取組を進めるためには、規格の標準化も不可欠だ。
危機意識は持っても行動には移さない?
第6回検討会の資料として公表された事業者向けアンケートによると、物流危機に対して問題意識を持っている事業者は全体で84.5%に上る。しかしながら、取り組みを実施している事業者は54.4%に過ぎない(運輸業のみだと、それぞれ92.2%/62.3%)。
各業界が物流の危機を認識しながら、行動には移していないというのが実態だ。
こうしたことから検討会は、「既存法令を参考に荷主企業が経営層を中核として物流改善に取り組むことに資する措置について検討すべき」として、新規の立法措置を考えている。
なお、参考とする既存法令の例として、意識改革に関するものとして鉄道事業法等における安全統括管理者の選任などを挙げている。また効率的な輸送に関しては省エネ法における中長期計画の作成等の規定、多重下請構造の是正に関しては建設業法の下請に係る施工体制台帳の作成などを挙げている。
この他に第6回会合では一般社団法人 全国物流ネットワーク協会が、高速道路における大型トラックの速度制限緩和の協議を準備することなどを求めている。全国物流ネットワーク協会は比較的規模の大きい特積会社(宅配便などの事業者)で構成された団体だ。
衝突被害軽減ブレーキなど、先進安全装備を備えた大型トラックに限り高速道路の制限速度を時速100kmに緩和すると(現行制度は時速80km制限)、例えば東京~大阪間の運行区間においては、ドライバーの拘束時間が一日当たり12.5時間から11時間へ1.5時間短縮されるという試算となっている。
2024年問題が現実のものとなる2024年4月まであと1年ほど。制度の整備などに時間を要するものもあるため、可能なものはできる限り前倒しして実施する必要がある。
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