ホンダ新型インサイトはプリウスの呪縛から脱却できたのか!? 

ホンダ新型インサイトはプリウスの呪縛から脱却できたのか!? 

 ホンダインサイトは、鳴り物入りでデビューした2代目が想定外の不振に終わり短命に終わっていたが、3代目は上質なミッドサイズ4ドアサルーンとして再起をかける。初代、2代目とプリウスの幻影を追うかたちになっていたインサイトだが、新型である3代目はボディサイズからもプリウスの対抗馬ではなく、独自路線を突き進もうというホンダの強い意志が感じられる。

 装い一新で再起をかける新型インサイトに試乗。プリウスの呪縛から脱却することができるのか、それともまだまだプリウスのライバルとして見られるのか?

文:ベストカー編集部/写真:平野 学
初出:ベストカー2019年3月10日号


志は高くとも、プリウスに惨敗した初代、2代目

 3度目の正直となるのか!? ホンダが3代目となる新型インサイトを2018年12月13日に国内に向けて投入した。

「インサイト」という車名はこれまで2度にわたり歴史が途絶えた過去がある。

 初代は市販ハイブリッド車としてプリウスに先を越されながらも、1999年9月、29.0km/Lだったプリウスを上回る10.15モード燃費35.0km/Lをマークし、当時としては世界一の燃費を誇るクルマとして、その独特なエクステリアデザインとともに存在感をアピールした。

クーペルックな4ドアセダンとして登場。フロントマスクは最新のホンダフェイスで、スポーティさも持ち合わせている

 徹底的な軽量化と空力性能を追求した2ドアボディに直3、1Lエンジン+モーターというホンダ独自のIMAと呼ばれるハイブリッドシステムを搭載。ホンダの技術力を見せつけるクルマだった。

 一方、プリウスは2003年9月に2代目へモデルチェンジし10.15モード=35.5km/Lをマーク。初代はまだまだ”実験車”のような雰囲気を漂わせていたけれど、5ドアハッチバックボディとなった2代目は一気に技術的洗練度を高め、販売的にもヒット作となっていった。

 2006年7月に生産を終了していたインサイトだが、着々と「プリウス撃沈」を目指して2代目の開発が進行しており、2009年2月5日、5ドアハッチバックの5ナンバーボディの一般的な姿で登場。

 10.15モード燃費=30.0km/Lの1.3L IMAハイブリッドで2代目プリウスをみごと捉えたのだが、この年の5月、3代目プリウスが10.15モード=38.0km/Lを達成しながら、インサイトとほぼ同価格帯で登場すると、まさに返り討ちにあったかのごとく販売面ではプリウスに打ちのめされてしまい、後継車となる3代目に引き継がれることなく’14年2月をもって生産を終了。

 インサイトの車名は4年間ホンダのラインナップから消滅していた。

あえて投入した3代目は4ドア

 といった経緯を振り返ると、インサイトというネーミングをあえて授けて日本国内に投入されたこの3代目は、ホンダにとっての挑戦であり、意欲作だということがヒシヒシと伝わってくる。

 全長4675mm、全幅1820mm、全高1410mmの4ドアセダンを採用したインサイトは、プリウスとは明らかに『違う』カテゴリーを目指し、直接対決をするのではなく、新たな価値観を創出するという狙いなのだろう。なだらかなラインを描くCピラーの6ライトのキャビンは相対的に小さく見え、4ドアクーペルックでスタイリッシュ。

 特にリア斜め上から見た姿は、抑揚のあるリアフェンダーラインが醸し出す踏ん張り感なども含めてスポーティだ。

 搭載されるパワーユニットは1.5Lエンジンを主に発電に使い、タウンスピードではモーターのみで走るi-MMDハイブリッド。最大トルク27.2kgmを起動の瞬間から発揮するモーターによる発進加速は、アクセル操作にダイレクトに反応し、力強く気持ちがいいし、スムーズで静か。

 ただ、このモーターでの走行はおおよそ100km/h前後までで、負荷の小さい高速巡航時はクラッチの断続により1.5Lエンジンで走ることになる。80〜100km/h加速などでは、ちょっと加速の物足りなさを感じる場面もあったけれど、現行型プリウスとほぼ同じレベルの動力性能と感じた。

 インテリアはソフトパッドに覆われたインパネの質感やシートの着座感など、プリウスとは〝ワンランク車格が違う〟ゾーンを狙っていることがよくわかる。価格的にも30万〜50万円程度インサイトが高く、この差は当然と言えば当然だが、重厚感を感じさせる乗り心地や、しっとりとした操舵感、静かな室内などは価格差以上の上質感だ。

 結論を言えば、3代目インサイトはとても上質な走りと乗り味を備えたクルマに仕上がっている。

 予防安全装備も最新版だ。ただ、現在の日本国内での4ドアセダンマーケットが限られている以上、その存在感をアピールするには思い切った『個性』が不可欠だろう。

 対峙するライバルはアウディA3セダンやいずれ日本にも投入されるベンツAクラスセダンなどだ。i-MMDの走りと燃費をしっかりとアピールしていきたい!

リア斜め上から見たプロポーションが美しいインサイト

ソフトパッドが貼られたインパネは上質感が漂う。後席は足元、頭上ともにスペースは充分で、4ドアセダンとして満足のできる室内空間だ

室内はフロント、リアともに広く快適。本革シートは室内の上質感を演出している

1.5Lエンジン+モーターによるハイブリッドを採用する3代目インサイト。出力は131ps/27.2kgmでWLTCモード燃費は25.6km/L

インサイト(写真左)は64.0km走って、実燃費は18.1km/Lだった

インサイトの価格(全モデルFFのみ)
LX=326万1600円
EX=349万9200円
EXブラックスタイル=362万8800円

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