■ヨーロッパでも「安かろう悪かろう」から抜けつつある
【TEXT:竹花寿実】
今でこそ欧州で認められている日本車も、かつては安さを武器に欧州車のシェアを奪う存在として見下されていた。
1990年代に欧州に上陸した韓国車も同様で、2000年代までは、ドイツでは「ライスシュッセル(どんぶり)」などと呼ばれ、アジア製のクルマとして揶揄されていた。
しかし、ここ10年ほどで欧州における韓国車、つまりヒュンダイとその傘下にあるキアのプレゼンスは格段に高まっている。
2018年上半期の市場シェアは、2社合わせて約6.4%で、欧州3位のフォードに迫るほどだ。
その理由はヨーロピアンなデザインと手頃な価格、長期保証などさまざまある。
何より「欧州市場向けに欧州で企画したモデルを、欧州の技術者やデザイナー(後にキア自動車社長兼ヒュンダイ自動車グループのデザイン最高責任者となったペーター・シュライヤーが有名)が開発し、欧州で生産する」というのを徹底したことだ。
ここが日本勢と決定的に違うところだ。先駆けとなったのは2006年に登場したキア・シードと、2007年デビューのヒュンダイi30だ。
ここから両社はラインナップを拡大。SUV人気の波にも乗った。さらにドイツメーカーから引き抜いた腕利きのテストドライバーにより、シャシーの完成度も年々向上。
今や欧州市場で突出したコストパフォーマンスを実現するに至っている。
近年の人気モデルは、i30とシードのワゴン版であるプロシード、ヒュンダイix25やキア・スポーテージといったコンパクトSUVなど。
また4ドアクーペのキア・スティンガーは、全長4830mmのスタイリッシュなスペシャルティカー。
366psと510Nmを発揮する3.3L、V6ツインターボも用意され、若いクルマ好きから大きな注目を集めている。
i30のハイパフォーマンス版であるi30Nも注目の的で、韓国車のイメージがポジティブに変化していることがうかがえる。
韓国勢は電動化への対応も早い。ヒュンダイは2016年にハイブリッドとPHEV、ピュアEVの3タイプをラインナップするアイオニックを発表。
今年のジャーマンCOTYには、163psと395Nmを発揮する電気モーターを搭載し、航続距離756kmを実現した電動コンパクトSUVのヒュンダイ・ネクソが、最後のベスト5にノミネートされた。
ちなみに日本車は1台もノミネートされていない。
ブランドイメージ向上にも余念がない。ヒュンダイは1999年からFIFAの公式スポンサーで、現在はキアも相乗り。こんなところにも彼らの本気度がうかがえる。
■WRCではトヨタがややリードを見せ始めた?
余裕の日本車勝利だと思ったら、どうにも旗色が悪いことが判明してきてしまった本企画。こりゃいかん。
こうなったら日本メーカー代表のトヨタと、韓国代表のヒュンダイが同じフィールドで戦うWRCでの勝負に持ち込もう。解説は国沢光宏氏だ。
【TEXT:国沢光宏】
WRCにおけるトヨタ最大のライバルは現代(ヒュンダイ)自動車だと思っていい。今シーズン開幕戦のモンテカルロこそシトロエンが勝ったものの、2位の現代自動車とわずか2.2秒差。
3位にトヨタながら2分15秒も引き離された。昨シーズンを見ても、マニファクチャラーズとしてトヨタ最大のライバルは現代自動車といってよかろう。
ちなみにWRC参戦、ヨーロッパ市場で現代自動車の売れゆきに大きな影響を与えている。トヨタも昨年大きく販売台数を伸ばした。
さて、トヨタと現代自動車、どちらが強いだろう? こらもう私の個人的な意見も入るけれど、トヨタだと考えます。
というのも現代自動車は車体の開発もエンジンも”ほぼ”現地に丸投げだからだ。トヨタの場合、車体をフィンランドのTMRが作っているものの、ドイツにあるTMGの風洞などを使い開発している。
だからこそヤリスWRカーの空力は、ライバルより一歩前を行く。今やすべてのメーカーがヤリスWRカーに似てきてしまったほど。
トヨタはエンジンもTMGで開発している。かつてF1のエンジンを開発し、それ以後、WECのエンジンも作り続けており技術的なノウハウは間違いなく世界TOPクラス。東富士との連携もキッチリ行ってます。
現代自動車も優秀なスタッフを揃えているとはいえトヨタの規模に届かず。今シーズンから明らかな性能差がわかるようになってくるだろう。
WRCで強くなればヨーロッパでのトヨタの販売台数も増えていくこと間違いなし。
【編集部まとめ】
ようやく安心できる答えが聞けてホッとしたが、今回判明したのは、韓国車のグローバルでの恐るべき競争力だ。
日本車も正直、ウカウカしてられない。今後も引き続き互いに刺激しあい、クルマのレベルを高めあっていただきたい。
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