高級車と聞いてどんな装備を思い浮かべるだろうか?人によって様々だと思うが、多くの人が思い浮かべる高級車の内装と言えばレザーをふんだんに使ったインテリアのはずだ。しかし、自動車の歴史を思い返せば、実はレザーシートはエントリーのモデルやグレードに用意されるもので、上級なクルマにはファブリックなシートが採用されていたのだ。
文:西川 昇吾/トヨタ
【画像ギャラリー】いい仕事してますねぇ まさに職人芸! 日本が誇るショーファーカーの内装に圧倒される……(13枚)画像ギャラリー屋根付き=高級車がファブリックシートを高級車用シートにした
自動車の起源や始まりの話となると、様々なものが挙がってくるが、自動車が務めている役割の先祖と言える存在の1つが馬車だ。登場し始めたばかりの19世紀末や20世紀初頭の自動車は、乱暴に言ってしまえば馬車に原動機を付けたようなものであった。
そのため、多くがオープンボディであったし、屋根や幌があっても車内が完全に覆われているということは少なかった。
そうなると自動車の車内は過酷な環境にさらされている。雨風に当たるし、太陽にもさらされる。そんな条件下でも耐久性が高い素材として、当時あった中でも適していたのが本革だったというわけだ。
しかし、自動車が進化してくると高級車を中心に車内が完全に覆われている、「室内」が存在するモデルたちが出てきた。そうなると雨風をシートは気にしなくてもいい。そこでベロア生地などを採用した自動車シートが登場してきたのだ。
確かに単純な座り心地や快適性を考えたらファブリックシートの方が良い。服が滑りにくいため、身体を保持しやすいしベタついたり蒸れたりすることもレザーシートに比べたら少ない。そう考えると快適性を重んじる高級車がファブリックシートになるのは自然と言える。
では一般的に「ファブリックシートに比べてレザーシートの方が高級」となったのはどんな背景があるのだろうか? それはファブリックシートのコストを下げることが可能になったのが大きい。
化学繊維が登場したことによりファブリックシートは耐久性を高めながら、コストを下げることに成功したのだ。こうしてレザーシートの方がステータス性のあるアイテムとなった。
ショーファーカーはファブリックシートが残っている
現在でも一部の高級車にはファブリックシートが用意されている。例えばトヨタのフラッグシップモデルであり、国産ショーファーカーの代名詞であるセンチュリーだ。セダンタイプのセンチュリーはファブリックシートが標準となっていて、レザーシートはオプションとなっている。
価格帯を普通に考えたらレザーシートが標準でもおかしくはないが、「高級車の伝統」とはどんなものであるかを教えてくれているような印象だ。ちなみにこのファブリックシートは、ジャカードモケットのウールファブリックとなっており、一般的なファブリックシートとは異なる高級素材で作られている。
また、世界的なショーファーカーであるロールスロイスのファントムにもファブリックシートが採用されている。
ロールスロイスの場合、選べる素材やカラーはオーナー次第なので、レザーでもファブリックでもなんでもOKと言えばそれまでだが、フロントシートがレザー、リアシートがファブリックという特別モデル「ファントム・プラティーノ」なども存在するのだ。運転手がレザーシートに座り、後部座席に座る人はファブリックシートに座る。このクルマならばどちらが高級なシートとして用意されているかは明白だ。
「高級車」と言われると定義が難しい場面もあるが、ショーファーカーとしての素性を持ちながら、ファブリックシートが用意されているモデルは、高級車の中でもより「本物」と言える存在だ。
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