ドイツの自動車部品大手、ZFの商用車ソリューションズ(CVS)事業部は、電動セントラルドライブ「CeTrax lite(セトラックス・ライト)」が量産に入ったことを発表した。
同社のセトラックス·ライトは受注をすでに複数獲得。その最初の顧客は日本のいすゞ自動車で、2023年3月より発売開始したエルフEVに搭載される。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
新型エルフEVに初搭載されたCeTrax lite
ZFのセトラックス・ライトは、小型商用車向けの電動セントラルドライブで、誘導モーター(非同期モーター)、インバーター、減速機(固定ギア)、冷却システムを一体化し統合制御を行なう電動コンポーネントである。
ZFは同様の大型向けの電動セントラルドライブ「CeTrax2」なども展開しているが、「ライト」はGVW7.5トン以下の小型商用車用に設計され、150kWのピーク出力と1500Nmのトルクを発揮する。
電動セントラルドライブ方式とは既存車のエンジン/多段トランスミッションと置き換えることで、プラットフォームの大きな変更はしなくても比較的容易に電動化を成立させることができる方式。
このためセトラックス・ライトを搭載したエルフEVは、ディーゼルの新型エルフとキャブシャシー、フレーム、アクスル等のドライブラインの一部など多くが共有化されている。
コンパクト設計でスペースを確保
電動セントラルドライブ方式はコンバージョンEV(既存車をベースに電動化した車両)としてはメリットが高いが、三菱ふそうのEV小型トラック新型eキャンターで採用されるリアアクスルにモーター等を組み込んだ電動アクスル方式に比べ、スペース確保の面で劣る。
そこでエルフEVでは、ボディ中央下部にセトラックス・ライトを搭載し、短くカットしたプロペラシャフトを介してリアアクスルを駆動。
軽量(約120kg)・コンパクト設計のセトラックス・ライトのおかげもあり、左右ホイールベース間やフレームの間に、大容量バッテリーモジュールを最大3基(1基あたり20kWh)搭載可能にしている。
なお今回の量産開始を受け、ZFのCVS事業部でドライブラインシステムのプロダクトライン責任者を務めるウィンフリード・グリュンドラーは、
「電動セントラルドライブである『CeTrax lite』は、お客様が既存の車両プラットフォームを電動化することを可能にします。これは、当社の技術的アプローチを証明するものであり、お客様が当社の電動ソリューションに寄せる信頼をさらに証明するものです」
「『CeTrax lite』は、静かで排出ガスゼロを求める都心部や『ラストマイル』貨物輸送のために設計されており、トップレベルの性能と効率性を提供します。この製品は、当社の『次世代モビリティ』戦略における重要な新たなマイルストーンであり、業界の脱炭素化に対する当社のコミットメントを強化します」と述べている。
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