【デリカ、プリウス、レジェンド大整形】新型車の顔激変チェンジ 理由と事情

今の日本車メーカーは、海外を中心に車を販売するから、日本国内に投入される新型車が減った。その結果、発売から10年以上を経過した設計の古い車種が増えている。

そうなると、より重要度な意味を持つのが商品力維持に欠かせないマイナーチェンジだ。

直近では、大変貌を遂げたデリカD:5のように、フロントマスクを大幅刷新するマイナーチェンジも話題になっているが、顔が大幅に変わった改良モデルは、中身もそれに見合う進化を遂げているのか?

文:渡辺陽一郎
写真:編集部、TOYOTA


マイナーチェンジで顔を変える事情とは?

顔立ちを大きく変えるマイナーチェンジには、いくつかのパターンがある。

最近多いのは、メーカーが統一されたフロントマスクを採用して、それに合わせるためにマイナーチェンジで顔立ちを大幅に変えるケースだ。本来ならフルモデルチェンジで対応したいが、前述のようにその周期が長引いた今では、マイナーチェンジで変えねばならないという事情がある。

2007年に発売されたデリカD:5のクリーンディーゼル車は、先ごろのマイナーチェンジでフロントマスクを刷新した。「ダイナミックシールド」と呼ばれる三菱車に共通の顔立ちが採用されたからだ。エクリプスクロスやeKクロスはこの顔立ちで発売され、アウトランダーやRVRは、デリカD:5と同じくマイナーチェンジで変えている。

同様の変更は他社にもあり、今のトヨタは、フロントグリルの開口部を大幅に拡大した。ヴィッツはマイナーチェンジでこの個性的な顔立ちに改めたが、ボディサイドとの視覚的なバランスを損なっている。

ボディサイドは発売時点の大人しい顔立ちと調和させていたから、マイナーチェンジで顔つきを個性的にしたら、ヴィッツの外観は前側が重い印象になった。

では、最新のマイナーチェンジはどうか? ここからは、顔が変わったデリカD:5、レジェンド、プリウスの中身の進化度を解説する。

“ドヤ顔”デリカは「中身も大幅に進化」

2019年改良型(左)と従来型のデリカD:5。今回改良されたのはディーゼル車のみで、引き続き従来型のガソリン車も併売されている

マイナーチェンジで変えられるのは、外観では基本的にフロントマスクとリヤビューだけなので、大きく変えればボディ側面との造形バランスに無理が生じる。デリカD:5にもこの傾向は若干あるが、新しいフロントマスクも直線基調だから、ボディ全体の調和はさほど乱れていない。

そしてデリカD:5は発売から12年を経過したので、中身も大幅に刷新した。マイナーチェンジを受けたのは販売総数の約90%を占めるクリーンディーゼルターボ搭載車で(駆動方式は4WDのみ)、ガソリンエンジン車は外観を変えず継続販売している。

デリカD:5のディーゼルエンジンは大幅に改良され、振動を抑えて回転感覚も滑らかになった。実用回転域の駆動力が高まり、ATは従来の6速から8速に変更された。変速時の挙動もスムーズだ。クリーン性能も向上させている。

ボディ剛性を高めて足まわりの設定も改良したため、走行安定性が高まり、乗り心地の粗さも解消した。操舵に対する反応も正確になっている。内装ではインパネの質感を高めた。

そして以前は装着されていなかった緊急自動ブレーキを作動できる安全装備も採用した。エクリプスクロスと同じ内容で、歩行者も検知できる。全車速追従型クルーズコントロールも備わり、作動中はドライバーのペダル操作を軽減するから、長距離移動時の快適性を高めた。

ただし、ステアリングの調節は上下のチルトのみで、前後方向のテレスコピックは採用していない。3列目シートは依然として重く、持ち上げて格納する時に体力を要する。

マイナーチェンジだから床は下げられず、最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)にも185mmの余裕を持たせたから、低床設計のヴォクシー/ノア/エスクァイアやステップワゴンに比べると乗り降りがしにくい。

このようにマイナーチェンジの限界があることも事実だが、フロントマスク、動力性能、走行安定性、操舵感、乗り心地、内装の質、安全装備は、フルモデルチェンジ並みに進化したといえる。

大胆チェンジのレジェンドは「走りも改善」

2018年2月改良型(上)と従来型(下)のホンダ レジェンド。フロントマスクは大幅に変わったが、同時に走りのチューニングも見直されている

変更を受けたフロントマスクについては、必ずしも今のホンダ車の顔立ちとはいえないが、ヘッドランプの形状には共通性が見られる。デリカD:5と同様、レジェンドもホンダの統一された表現を採用した。

マイナーチェンジでは、外観のほかに運転感覚も改めている。以前はカーブを曲がる時に、後輪の左右に装着されるモーターの制御を強く意識した。外側の後輪に強い駆動力を与えて積極的に曲がらせたが、感覚が少し不自然で、走行安定性もやや妨げていた。

この運転感覚の不満をマイナーチェンジで払拭している。ボディ剛性が高まってサスペンションの設定も見直され、後輪左右の駆動力配分で積極的に曲げる必要が薄れたからだ。

開発者によると「ボディと足まわりの変更で、4輪の接地性が向上した。後輪のモーターの駆動力を高めることが可能になり、(左右輪の駆動力に差を付けて曲げる)トルクベクタリングに頼る必要性が薄れた」とのことだ。

このほか内装の質を高め、ホンダセンシングには渋滞時の運転支援機能も加えた。

機能で最も大きな改良は走行安定性だろう。トルクベクタリングの不自然さが薄れ、車両重量は約2トンに達するが、ミドルサイズセダンに近い感覚で運転できる。居住性も快適で、凝ったメカニズムと充実した装備を考えると、707万4000円の価格も納得できる。

問題は持ち味で、上級セダンに求められる華やかさとか、スポーツ性が乏しい。機能と価格のバランスは優れているが、これは実用セダンの価値観だ。

そのためにレジェンドの販売は低迷して、日本では1か月に40~60台にとどまる。北米の販売も低調で、世界的な不人気車になっている。この傾向はマイナーチェンジ後も変わっていない。

“すっきり顔”のプリウス「中身の変更は物足りない」

2018年12月改良型(上)と従来型(下)のプリウス。賛否両論の顔は、すっきりした印象に改められたが、果たして機能面の改良度は?

メーカーのファミリーフェイスに基づく変更ではなく、単純に評判が良くないために、顔立ちを変えることもある。プリウスのマイナーチェンジがそれだ。

現行型のフロントマスクは、先に述べたヴィッツと同じで今のトヨタ車のトレンドに沿うが、個性が強く評判が悪かった。テールランプを縦長に配置した形状も同様だ。

それでも現行プリウスは、発売から3年を経過した2018年に11万台以上を登録した。小型/普通車の販売ランキングも、ノート、アクアに続いて3位だ。

従って人気車といえるが、先代型は発売から3年後の2012年に、32万台近くを登録していた。軽自動車まで含めた国内販売の総合1位だったが、現行型の売れ行きは先代型の35%と少なすぎる。そこでマイナーチェンジを行い、フロントマスクやリヤビューを改めた。

プリウスPHVのように4灯式LEDヘッドランプを備えるなど質感を高めるかと思ったが、デザインの変わり映えは乏しい。必ずしも4灯式LEDを使う必要はないが、見栄えはもっと変えるべきだった。

リアビューは、縦長だったテールランプが、プリウスPHVに似た横長になり、見栄えを馴染みやすくしている。

このほかの変更点として、緊急自動ブレーキを作動できるトヨタセーフティセンスの全車標準装着(以前は一部がオプションだった)、通信機能の設定などがある。

機能の変更は物足りない内容で、売れ行きも伸びない。改良を実施したのは2018年12月だが、2019年1月の対前年比は94%、2月は103.1%だ。

デザインが悪いと車の売れ行きが伸びないのは事実だが、それがすべてではない。販売の落ち込みを改善するには、機能の進化が不可欠だ。

難しいのは、プリウスが今でも販売の上位に位置するハイブリッド車のトップモデルになることだろう。ノートやアクアは価格の安いコンパクトカーだから、プリウスの敵ではない。

つまり、プリウスは過去の自分と闘っているから、売れ行きを伸ばすのが難しい面もある。それだけに総合的に魅力を高めることが大切だ。そこに挑み続けるのがプリウスだと思う。

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