大胆チェンジのレジェンドは「走りも改善」
変更を受けたフロントマスクについては、必ずしも今のホンダ車の顔立ちとはいえないが、ヘッドランプの形状には共通性が見られる。デリカD:5と同様、レジェンドもホンダの統一された表現を採用した。
マイナーチェンジでは、外観のほかに運転感覚も改めている。以前はカーブを曲がる時に、後輪の左右に装着されるモーターの制御を強く意識した。外側の後輪に強い駆動力を与えて積極的に曲がらせたが、感覚が少し不自然で、走行安定性もやや妨げていた。
この運転感覚の不満をマイナーチェンジで払拭している。ボディ剛性が高まってサスペンションの設定も見直され、後輪左右の駆動力配分で積極的に曲げる必要が薄れたからだ。
開発者によると「ボディと足まわりの変更で、4輪の接地性が向上した。後輪のモーターの駆動力を高めることが可能になり、(左右輪の駆動力に差を付けて曲げる)トルクベクタリングに頼る必要性が薄れた」とのことだ。
このほか内装の質を高め、ホンダセンシングには渋滞時の運転支援機能も加えた。
機能で最も大きな改良は走行安定性だろう。トルクベクタリングの不自然さが薄れ、車両重量は約2トンに達するが、ミドルサイズセダンに近い感覚で運転できる。居住性も快適で、凝ったメカニズムと充実した装備を考えると、707万4000円の価格も納得できる。
問題は持ち味で、上級セダンに求められる華やかさとか、スポーツ性が乏しい。機能と価格のバランスは優れているが、これは実用セダンの価値観だ。
そのためにレジェンドの販売は低迷して、日本では1か月に40~60台にとどまる。北米の販売も低調で、世界的な不人気車になっている。この傾向はマイナーチェンジ後も変わっていない。
“すっきり顔”のプリウス「中身の変更は物足りない」
メーカーのファミリーフェイスに基づく変更ではなく、単純に評判が良くないために、顔立ちを変えることもある。プリウスのマイナーチェンジがそれだ。
現行型のフロントマスクは、先に述べたヴィッツと同じで今のトヨタ車のトレンドに沿うが、個性が強く評判が悪かった。テールランプを縦長に配置した形状も同様だ。
それでも現行プリウスは、発売から3年を経過した2018年に11万台以上を登録した。小型/普通車の販売ランキングも、ノート、アクアに続いて3位だ。
従って人気車といえるが、先代型は発売から3年後の2012年に、32万台近くを登録していた。軽自動車まで含めた国内販売の総合1位だったが、現行型の売れ行きは先代型の35%と少なすぎる。そこでマイナーチェンジを行い、フロントマスクやリヤビューを改めた。
プリウスPHVのように4灯式LEDヘッドランプを備えるなど質感を高めるかと思ったが、デザインの変わり映えは乏しい。必ずしも4灯式LEDを使う必要はないが、見栄えはもっと変えるべきだった。
リアビューは、縦長だったテールランプが、プリウスPHVに似た横長になり、見栄えを馴染みやすくしている。
このほかの変更点として、緊急自動ブレーキを作動できるトヨタセーフティセンスの全車標準装着(以前は一部がオプションだった)、通信機能の設定などがある。
機能の変更は物足りない内容で、売れ行きも伸びない。改良を実施したのは2018年12月だが、2019年1月の対前年比は94%、2月は103.1%だ。
デザインが悪いと車の売れ行きが伸びないのは事実だが、それがすべてではない。販売の落ち込みを改善するには、機能の進化が不可欠だ。
難しいのは、プリウスが今でも販売の上位に位置するハイブリッド車のトップモデルになることだろう。ノートやアクアは価格の安いコンパクトカーだから、プリウスの敵ではない。
つまり、プリウスは過去の自分と闘っているから、売れ行きを伸ばすのが難しい面もある。それだけに総合的に魅力を高めることが大切だ。そこに挑み続けるのがプリウスだと思う。
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