トヨタが北米で大型トラック用の新型燃料電池パワートレーンキットを2023年後半より製造開始すると発表してからほどなくして(約1週間後)、パッカーグループの米国のトラックメーカー2社がトヨタ製パワートレーンを採用した燃料電池トラックを商用化することを明らかにした。
パッカーは米国のケンワースとピータービルトのほか、オランダのダフなどが所属する世界でも大手のトラックグループで、同日、パッカーとトヨタの戦略提携拡大も発表されている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/Toyota Motor Sales, U.S.A.・Kenworth Truck Company・Peterbilt Motors Company・PACCAR Inc.
パッカーとトヨタが水素燃料電池トラックで提携拡大
パッカーとトヨタ・モーター・ノース・アメリカ(トヨタUSA)は2023年5月2日、ゼロエミッションの水素燃料電池(FCEV)トラックの開発・製造における協業を拡大し、パッカー傘下のケンワースおよびピータービルト両社の大型トラックに、トヨタの次世代燃料電池モジュールを搭載すると発表した。
トヨタUSAはその1週間ほど前の4月24日に、新型燃料電池パワートレーンキットがカリフォルニア州の規制当局(CARB)より「ゼロエミッションパワートレーン」(ZEP)に認定されたことを明らかにしていた。
カリフォルニア州は全米に先駆けて環境規制を導入することで知られており、CARBによる認定は低炭素トラックがインセンティブ(助成金)受ける条件にもなっている。また、CARBが中・大型トラック用の内燃機関(ディーゼルエンジン)を段階的に禁止する規制を明らかにしたのは4月28日だった。
この規制を巡っては米国トラック協会が反対するなど物議を醸しているが、前年の12月にニコラのFCEVがZEP認定を受けたのに続き、トヨタ製FCモジュールも認定され、さらに韓国・現代自動車の大型FCEVトラックも米国市場向けのローンチが発表された。
バッテリーEV(BEV)が苦手としている航続距離の長い輸送用途において、大型FCEVトラックが相次いで発表・発売されたことで、長距離輸送のゼロエミッション化も「非現実的とは言えない」という判断がCARBにはあるのかも知れない。
ともあれ、今回の合意によりパッカー傘下のケンワースの大型トラック「T680」と、同ピータービルト「579」のFCEVバージョンが、商用化に向けて動き出すことになった。
トヨタUSAは新型燃料電池パワートレーンキットを2023年後半から米国ケンタッキー州の工場で生産開始するとしており、ディーゼルエンジンと軽油タンクの代わりに同パワートレーン(水素タンクを含む)を搭載するパッカーの大型FCEVトラックは、2024年中に顧客への納車を予定している。
パッカーとトヨタUSAそれぞれの担当者のコメントは次の通りだ。
「これまでトヨタのチームとともに精力的に仕事をしてきましたが、その努力がこの業界をリードする大型FCEVトラックに結実するだろうという確信を深めています。ケンワースとピータービルトのお客様が求める、高い品質と信頼性、アフターマーケットのサポートの全てを新型トラックでも提供します。
この提携拡大によりパッカーグループのゼロエミッション車のラインナップはトラック業界でも最大規模となります。これによりお客様の運用効率の改善と環境インパクトの低減につながるでしょう」。
(パッカーの最高技術責任者、ジョン・リッチ氏)
「水素技術をリードするトヨタの燃料電池が実際に大型トラックを動かし、全米の高速道路をゼロエミッションで走るという未来の実現に向けて、パッカー社とともに取り組めることを嬉しく思っています。
この革新的な技術は、商用車を運行するお客様に、カーボンニュートラルを達成する実現可能なオプションを提供します。同時に、環境中への炭素の排出を最終的に排除するというトヨタの使命にも貢献することができます」。
(トヨタUSAのビジネス開発担当バイスプレジデント、クリストファー・ヤン氏)