日本民営鉄道協会では、大手民鉄16社(東武、西武、京成、京王、小田急、東急、京急、東京メトロ、相鉄、名鉄、近鉄、南海、京阪、阪急、阪神、西鉄)における2022年度に発生した駅員や乗務員等の鉄道係員に対する暴力行為の件数について集 計を行ったところ、暴力行為の発生件数は138件と、前年度に比べて12件増加したことが判明した。バスの事例とは異なるが、公共交通機関での出来事なので紹介する。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■コロナ前の水準に戻りつつある
2022年度の発生件数は下期については対前年度同期と比較し減少したが、上期の増加が上回り2021年度に続き増加しており、新型コロナウイルス感染症流行以前の水準に近づく結果となった。
暴力行為が発生する状況としては、酩酊しているお客様を介助しようと近づいた時や、はっきりとした理由が見当たらないまま突然暴力を振るわれるケースが多く、時間帯については深夜帯(22時以降)に集中して発生している。
また加害者年齢は幅広い年代に分布しており、飲酒している場合が多い。同協会では犯罪である暴力行為をなくし、安全で快適な鉄道を維持するため引き続き啓発ポスターの掲出など各種取り組みを実施する考えだ。
■統計による詳細分析
まず発生の曜日だが、一般的には休日前である金曜日や土曜日に多いだろうと推測される。確かに土曜日が24件、金曜日は22件と多いのは事実だが日曜日も22件で、最も多かったのは火曜日の25件だった。
最も少ないのが水曜日の13件なので誤差ともいえなくはない。週末を中心としてまんべんなく発生していると言ってもいいだろう。
発生時間帯についてはやはり22時以降終電までが50件と最も多く、始発から9時までが18件なので一目瞭然だ。それでも朝の時間帯は過去3年間で最も多くなっている。
■ホームでの発生が多い
発生場所としてはホームが60件で全体の43パーセントと最も多い。次いで改札だ。車内は12件で9パーセントと少ないのは、運転士も車掌も通常は乗客のいる車内にはいないからだろう。
どうしても乗客と直接接する改札やホーム上での発生が多いのは、機会が多いからだろう。これがバスであればワンマンで有人のバスターミナルのような停留所が少ないことから、ほぼ車内での発生ということになるのだろう。
発生の経緯として最も多いのは「理由なく突然に」という鉄道マンにとってはたまったものではない理由だ。次いで「酩酊者に近づいて」というもの。いつの世の中でも酔っ払いは厄介だ。
さらに「迷惑行為を注意して」というもので、いわゆる逆ギレというやつだ。割合的には多くないものの「けんかの仲裁」というのもある。
国鉄が存在した時代には国鉄の法執行機関として司法警察権を持った国鉄専門の警察である「鉄道公安職員」(鉄道公安官・国鉄職員)がいて、国鉄用地内であればすぐに飛んできて、車内でも警乗していて解決してくれた。
現在では都道府県警の鉄道警察隊が鉄道の治安を守っているが十分なマンパワーをさけていないようで、このような事件は後を絶たない。