【HVやEV全盛期に復権希望】クルマ界の化石技術!?? なぜOHVエンジンは生き残っているのか?

■なぜアメリカ車にばかりOHVが生き残っているのか?

シボレーコルベットZR-1に搭載されている6.2L、V8スーパーチャージャーエンジン。直噴で可変バルブタイミング機構付きで755hpを発生する最新エンジンだ

 実はOHVは、昔に比べれば減ったものの、今でもしっかり生き残っている。

 シボレーコルベットやカマロのV8OHV、クライスラー300Cやチャレンジャー、チャージャーのHEMIエンジンがその代表例だろう。おもしろいのはトップグレードのスポーツモデルまでもOHVエンジンを採用していることだ。

クライスラー300Cやダッジチャレンジャー、チャージャー、ジープ系のSRT‐8モデルに搭載されているHEMIエンジンは、5.7L、6.1L、6.4LのV8、OHVだ

 OHVだからといって、化石のような古いエンジンではなく、正真正銘の最新エンジンである。

 2019年モデルのコルベットZR‐1に搭載されているLT5型6.2L、V8OHVエンジンは、直噴、可変バルブタイミング機構付きで、スーパーチャージャーを装着し、ノーマルコルベット比300hp、Z06より100hpアップの755hp/98.8kgm! トランスミッションは7速MTと8速ATを用意している。

 高回転が苦手というデメリットを、6.2Lという大排気量でカバーしているのだ。

 排気量が大きい低回転型のエンジンには、バルブタイミング可変機構の効果は低いし、重がたいカムシャフトをV型エンジンのヘッドに2本(DOHC なら4本だ)も取り付けて重たくするより、Vバンクの間に1本のカムを配して、両バンクの吸排気バルブをプッシュロッドで駆動したほうが軽くシンプルにできる(もっとも日本車や欧州車のエンジンはブロックもヘッドも徹底的に軽量化しているので、DOHCでも軽量だ)からだ。

 またOHVエンジンのカムシャフトはエンジンの下部に位置するため、エンジン全体の大きさをコンパクトにできるメリットがある。

カムが上部になくエンジンの全高が低いので、搭載位置を低くできるために、スポーツカーにとって有利なOHVエンジン。写真はコルベットZR‐1

 シボレーコルベットを見ればわかるように、ボンネットの位置が低いのはOHVの利点。上部にカムがないため、コンパクトで低く搭載できるうえに、エンジン下部にあるオイルパンを不要とするドライサンプを組み合わせたことにより、美しいロングノーズ、低いボンネットを得ることができたのだ。

 また、SOHCエンジンと比較して構造が簡単で低コスト、耐久性に優れるといったメリットがある。

 V8の大排気量でも、負荷が低い状態の場合は片バンク、つまり気筒休止させることで燃費性能を高めている。

 負荷が少な過ぎても燃費は悪化するので、低回転型エンジンにも気筒休止は効果絶大なのである。

 大型トラックや産業用のOHVエンジンでは、カムチェーンやタイミングベルトを使うより、プッシュロッドのOHVのほうが耐久性、信頼性が高く、エンジン回転が低ければSOHCと実用上の性能差はほとんどない。ターボの過給圧やEGRの量を調整することで軽負荷時の燃費を改善する工夫も施されている。

■OHVのデメリットは?

 OHVエンジンは高回転が苦手というデメリットがあり、吸排気バルブを作動させる機構のプッシュロッドが高回転になると上がりっぱなしになる「バルブジャンプ」という現象が起きる。

 しかし、低回転域から分厚いトルクを発生し、プッシュロッドやロッカーアームから発する、あのドロドロという独特の音はそれをカバーするだけの魅力がある。だから、OHVはいまだにアメリカ人に愛されているのだ。

 また、整備性に優れている点も評価されている。目的や用途によってはOHVだって、まだまだ全然イケるのである。もっとOHVエンジンが見直されてもいいのではないか、と思う。

 ボンネットの低い、大排気量OHVエンジンのスポーツカーが増えないかと期待しています!

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