【HVやEV全盛期に復権希望】クルマ界の化石技術!?? なぜOHVエンジンは生き残っているのか?

 クルマ好きのオジサン世代なら懐かしいOHVエンジン。今やDOHCエンジンが主流だが、実はいまでもしぶとく生き残っていた!

 なぜこんな時代にあって、OHVエンジンは生き残っているのか? DOHCやSOHCと何が違うのか? モータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。

文/高根英幸
写真/ベストカー編集部、日産自動車、ゼネラルモーターズ


■DOHCじゃなければダメなのか?

かつて日本車のスポーツカーやスペシャルティに搭載されるエンジンはDOHCじゃなければダメだった。写真はスカイラインRSのFJ20E

 4サイクルエンジンはガソリンでもディーゼルでも、燃焼室の吸排気を行なうためのバルブを備えている。

 傘状に広がった形状でバルブシートから突き出ることにより開閉するモノで、正式にはポペットバルブという。ピストンの上下動に合わせてクランクシャフトが2回転するごとに1回ずつ吸排気のバルブが開閉する。

 バルブの数をみても、吸排気それぞれ1つずつの1気筒あたり2バルブから、より吸排気効率を高めるために4バルブが登場。

 軽量化やコストダウンのために吸気側のみ2バルブとした3バルブ、円形の燃焼室でバルブの面積をより大きく採れる吸気3、排気2の5バルブまで登場した。今は燃費性能と高出力、コストのバランスを考えた4バルブが主流だ。

 この吸排気バルブを動かしている機構にも種類があって、エンジンが生まれてから長い間かけて進化してきた。

 当初の4サイクルエンジンはクランク近くにカムシャフトを備え、回転するカムの動きをシリンダーの側面からプッシュロッドで上に伝え、そのまま上向きにバルブが開閉するサイドバルブという形式のバルブ駆動だった。

 低回転型のエンジンでは、これでも十分に機能したが、ピストンの横にバルブが上向きに備わるため燃焼室はバスタブ型と呼ばれるほど楕円形に広かった。

 そのため圧縮比を高めることが難しかったので、圧縮比を上げてトルクを引き出すために、ピストンの上に吸排気バルブを移動させる構造が考え出された。

■OHVエンジンの構造は?

吸気バルブと排気バルブがシリンダーヘッドの上に備えられ、バルブを駆動するカムシャフトをブロックの中に入れているのが一番左のOHV(オーバーヘッドバルブ)エンジン。プッシュロッドと呼ばれる長い棒を介してロッカーアームを押し上げ、バルブの開閉を行っている

 シリンダーの側面にプッシュロッドを備えるまではそのままに、ロッドの長さを延長してシリンダーヘッドを貫くほどに伸ばして、ロッドの先端にロッカーアームというシーソーのような部品を追加して、ロッドと反対側にある吸排気バルブを押し下げるように駆動させるのだ。

 これがオーバーヘッドバルブ。これにより燃焼室はコンパクトになり、混合気を大きく圧縮して力強いトルクを得ることができるようになった。

 それから当分、バルブ駆動はOHVの時代が続く。カムシャフトをバルブに近づけてプッシュロッドをなくしたOHC(オーバーヘッドカムシャフト、SOHCとも呼ばれる)も登場するが、採用したのは高級なスポーツカー向けのエンジンくらいで、大半のクルマは排気量を増やしてトルクを高めていく。

 1970年代に入る頃にはレーシングカーやスーパーカーがDOHCを採用し始め、高回転型エンジンが登場し始める。量産車では徐々にSOHCも増えてOHVのエンジンは減っていくが、大排気量のアメ車やトラックなどはOHVのままだった。

 そして今や、バルブ駆動はDOHCが主流になった。エンジンパワーを絞り出すような高回転型エンジンではなくてもDOHC4バルブを採用するのが一般的になったのだ。

 なぜかと言うと、燃費性能を高めるにはエンジンの回転数や負荷に応じて、吸排気バルブを開閉するタイミングを変更したほうがいいからだ。

 吸気バルブと排気バルブを別々に制御するには、カムシャフトが独立しているDOHCのほうが都合が良いのである。

 ちなみに日本車の乗用車最後のOHV搭載車は、2代目レオーネ(1979~1984年)のEA81型の1.8L、水平対向4気筒OHVターボだった。

日本車の乗用車最後のOHVエンジンとなった2代目レオーネ。1982年11月登場のレオーネ4WDターボはほかの1.8Lターボが135㎰という時代、120㎰/19.0kgmを発生。レッドゾーンは5500rpmと低かった

■なぜアメリカ車にばかりOHVが生き残っているのか?

シボレーコルベットZR-1に搭載されている6.2L、V8スーパーチャージャーエンジン。直噴で可変バルブタイミング機構付きで755hpを発生する最新エンジンだ

 実はOHVは、昔に比べれば減ったものの、今でもしっかり生き残っている。

 シボレーコルベットやカマロのV8OHV、クライスラー300Cやチャレンジャー、チャージャーのHEMIエンジンがその代表例だろう。おもしろいのはトップグレードのスポーツモデルまでもOHVエンジンを採用していることだ。

クライスラー300Cやダッジチャレンジャー、チャージャー、ジープ系のSRT‐8モデルに搭載されているHEMIエンジンは、5.7L、6.1L、6.4LのV8、OHVだ

 OHVだからといって、化石のような古いエンジンではなく、正真正銘の最新エンジンである。

 2019年モデルのコルベットZR‐1に搭載されているLT5型6.2L、V8OHVエンジンは、直噴、可変バルブタイミング機構付きで、スーパーチャージャーを装着し、ノーマルコルベット比300hp、Z06より100hpアップの755hp/98.8kgm! トランスミッションは7速MTと8速ATを用意している。

 高回転が苦手というデメリットを、6.2Lという大排気量でカバーしているのだ。

 排気量が大きい低回転型のエンジンには、バルブタイミング可変機構の効果は低いし、重がたいカムシャフトをV型エンジンのヘッドに2本(DOHC なら4本だ)も取り付けて重たくするより、Vバンクの間に1本のカムを配して、両バンクの吸排気バルブをプッシュロッドで駆動したほうが軽くシンプルにできる(もっとも日本車や欧州車のエンジンはブロックもヘッドも徹底的に軽量化しているので、DOHCでも軽量だ)からだ。

 またOHVエンジンのカムシャフトはエンジンの下部に位置するため、エンジン全体の大きさをコンパクトにできるメリットがある。

カムが上部になくエンジンの全高が低いので、搭載位置を低くできるために、スポーツカーにとって有利なOHVエンジン。写真はコルベットZR‐1

 シボレーコルベットを見ればわかるように、ボンネットの位置が低いのはOHVの利点。上部にカムがないため、コンパクトで低く搭載できるうえに、エンジン下部にあるオイルパンを不要とするドライサンプを組み合わせたことにより、美しいロングノーズ、低いボンネットを得ることができたのだ。

 また、SOHCエンジンと比較して構造が簡単で低コスト、耐久性に優れるといったメリットがある。

 V8の大排気量でも、負荷が低い状態の場合は片バンク、つまり気筒休止させることで燃費性能を高めている。

 負荷が少な過ぎても燃費は悪化するので、低回転型エンジンにも気筒休止は効果絶大なのである。

 大型トラックや産業用のOHVエンジンでは、カムチェーンやタイミングベルトを使うより、プッシュロッドのOHVのほうが耐久性、信頼性が高く、エンジン回転が低ければSOHCと実用上の性能差はほとんどない。ターボの過給圧やEGRの量を調整することで軽負荷時の燃費を改善する工夫も施されている。

■OHVのデメリットは?

 OHVエンジンは高回転が苦手というデメリットがあり、吸排気バルブを作動させる機構のプッシュロッドが高回転になると上がりっぱなしになる「バルブジャンプ」という現象が起きる。

 しかし、低回転域から分厚いトルクを発生し、プッシュロッドやロッカーアームから発する、あのドロドロという独特の音はそれをカバーするだけの魅力がある。だから、OHVはいまだにアメリカ人に愛されているのだ。

 また、整備性に優れている点も評価されている。目的や用途によってはOHVだって、まだまだ全然イケるのである。もっとOHVエンジンが見直されてもいいのではないか、と思う。

 ボンネットの低い、大排気量OHVエンジンのスポーツカーが増えないかと期待しています!

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