■北九州はさらに大幅値上げか?
これまでの内容はあくまでも西日本鉄道(西鉄本体)が運営する福岡市を中心とした路線バスの話で、北九州地区のバスを運行する西鉄バス北九州では若干異なる改定申請がされている。実施予定日は2024年1月で同じだが、上限運賃の平均改定率は21.20%で、実施運賃の平均改定額は16%程度の予定になっている。
よって単純比較では福岡市内よりも北九州市内の方が同じ西鉄バスでも値上げ率が高いことになる。対キロ区間制運賃の初乗りは現行170円のところ、実施運賃は220円になる予定だ。小倉駅-砂津間の現行運賃は150円だが、実施予定運賃は割引を実施しても180円に値上げされる。
もちろん定期運賃も値上げされる。これ以外では申請を見送った西鉄バス筑豊と西鉄バス佐賀・西鉄バス久留米を除く、西鉄バス宗像・北九西鉄タクシー・西鉄バス二日市もすべて値上げされる。
■深刻な運転士不足は慢性的にお悩み事項
ところで輸送人員の低迷はコロナや少子高齢化、景気の悪化である程度説明がつく。当然ながら輸送人員の減少は運賃収入の低下を招き経営が厳しくなる。燃料費の高騰はバスを走らせるコストが跳ね上げることなので、運賃転嫁は仕方がない。
航空機や船舶である程度自由に燃油サーチャージを取っていることからすれば、バスで取らないほうがおかしいという意見もある。
そして西鉄では運転士不足について興味深い統計を公表している。西鉄本体での話だが、全2045名の乗務員のうち50歳から69歳までの年齢層が60%を占め、25歳から39歳までの若年層乗務員が極端に少ないことが統計で公開された。
さらに採用者数と退職者数の推移は年々マイナスになっており(採用をしても退職の方が多いという意味)、2022年では採用20名に対して退職86名と66名の純減になっている。西鉄では「離職防止および優秀な人材を確保するために待遇改善が必要である」旨を明言しており、相当な危機感があるものと思われる。
■それでも投資はしっかりやる!
こういった状況は西鉄に限らず、日本のバス事業者の多くが抱えるジレンマである。しかしコロナで大型バスの新車導入を見送った2020年から2022年を経過し、以降は車両や車両装備品や営業所施設を更新して、総合的な投資の上乗せを明言している。
西鉄ではハイブリッドバスやレトロフィットEVバスを導入して燃料費の節約を図るとともに、大量輸送区間では連節車を導入して運転士不足を少しでも補う努力はしている。福岡市や北九州市は地方都市の中では有数のバス路線数を誇っており、それは紛れもなく同社が積み上げた実績と歴史であることは間違いない。
■住民の足は乗って守れ!!
しかし運賃値上げにより運転士の待遇改善につながるかどうかは、他のコスト高騰やそもそもの運賃収入減少という側面があり、予断を許さない。いずれにせよ、乗車することにより通勤・通学や通院、お買い物やお出かけの足は守っていきたい。
そして待遇改善が実現し乗務員が増加することにより、かつてのような時刻表要らずで高速バスに乗れるほどの本数が確保されることを願いたい。九州旅行の足掛かりは福岡市を中心にする方が多いと思われるが、便利な路線バスを活用してドアツードアで楽しんでいただきたい。
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