前々回のスペイングランプリで、アルファタウリの角田裕毅が素晴らしい走りを見せたが、ペナルティ5秒加算で12位、惜しくもポイントを逃した。その問題のシーンは後半にあった。得意のレイトブレーキングが出来ずにオーバーラン気味になった角田。アルファロメオの周冠宇が反応し、接触をかわした。これが問題になりぺナルティとなったのだ。一見するとぺナルティを取るほどのことではないのでは?……というのが大方の見方なのだが、そうではないらしい。元F1メカニックの津川哲夫氏に解説してもらった。
文/津川哲夫
写真/Redbull,Mercedes,Haas,AlfaRomeo,Williams
■快走の裏でミディアムタイヤを苦しめていた角田裕毅
角田は予選でニック・デ・フリースの後ろ15番手スタートだが、確実に順位を上げアロンソにかわされるまで8位を快走。結果的には終盤でオコンに抜かれ9位でゴールしたが、順位を取り戻すために果敢にアタックした。しかし、このアタックがミディアムタイヤを苦しめ、直後にアルファロメオの周冠宇に迫られた。
そして56周目のストレートで、周冠宇はDRSを使ってターン1にアプローチし、角田の前に鼻先を出した。ターン1をサイドバイサイドで周り、角田はターン2へのアプローチで少し外側へ膨らんだ。周冠宇は「イン側にスペースがない」と判断し、回避行動をとった。角田はターン2のエイペックスを目指してラインを取り続け、FIAは彼が他のクルマを追い出したとして、5秒のペナルティを課した。このペナルティにより、角田の順位は一気に12番に下がってしまった。
FIAの判断についてはまだ角田のファンたちが議論しているが、いくら騒いでも状況は変わらない。実際、アルファタウリはレース後にプロテストを行っておらず、結果を覆す手段はない。もちろん、FIAの判断の一貫性に疑問を持つ人々も多いのだが、残念ながら起こってしまったことを変えることはできない。
■周冠宇はペナルティを狙ったのかもしれない
一つ言えることは、ターン1のアプローチ前のストレートで角田は周冠宇のDRSから逃れるように二度方向を変えたことだ。もちろん、これは許容される行為であり、ペナルティの対象ではないが、周冠宇とのバトルにおいて、ターン1での行いは意図的だと解釈される可能性がある。
また、周冠宇が逃げた場面では、角田車には十分なスペースがあったが、ターン1でのブレーキングで多くのカーボンダストをまき散らしていたため、角田車のブレーキングもかなり困難だったはずだ。そのため、周冠宇とのサイドバイサイドでレースラインを取ることができず、進入速度が高すぎてアウトへ流れてしまった。周冠宇が回避してくれたことで、むしろアクシデントが回避されたと言えるかもしれない。
確かに周冠宇は逃げることで角田に押し出されたように見せかけ、ペナルティを狙ったのかもしれない。しかし、こうしたアピールはF1ドライバーが常に行っていることだ。アロンソやハミルトンなども常習的に行っている。ただ、これらはある意味で政治的な戦略であり、レースの一環とも言えるので、角田もそれを学ばなければならないだろう。
コメント
コメントの使い方