全長25メートルの「ダブル連結トラック」はトラック輸送の効率化を目指し、欧州の事例を参考として国内に導入されたものだが、その欧州のオランダに連結総重量60トン・全長25.25メートルの完全電動トレーラ連結車が登場した。
また、トレーラ長大化の本場となっている北欧のスウェーデンでは、トレーラ2台分に当たる総重量74トン・全長32メートルという超長大EVトレーラまで現れている。脱炭素という目標のために、欧州トラックの長大化と電動化が同時に進んでいるようだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/DAF N.V.・Vlot Logistics・AB Volvo
オランダ初! 電動の「エコ・コンビ」が登場
オランダのアイントホーフェンを本拠とする大手トラックメーカー・DAF(ダフ)は、2023年6月27日、同国の運送会社であるヴロト・ロジスティクスがオランダ初の完全電動「エコ・コンビ」を導入すると発表した。
エコ・コンビはもともとスカンジナビア(北欧)が発祥の長大トレーラ「ユーロ・コンビ」の一種で、連結全長25.25メートルのトラック・トレーラ連結車だ。連結総重量(GCW)は60トンまで緩和されている。長大化により一台あたり30~50%多くの荷を運べ、ディーゼル車でも従来比で20%以上のCO2を削減可能とされる。
オランダなどはユーロ・コンビをエコ・コンビの名称で導入している。なお、日本の「ダブル連結トラック」もユーロ・コンビを参考に導入された連結全長21メートルを超える連結車だ。大型トラック2台分の積荷を想定するダブル連結トラックでも全長は25メートルまで緩和されているが、総重量の緩和は行なわれていないため、重量のある貨物は運べない。
欧州においてトレーラの長大化を推進してきたのは、スウェーデンやフィンランドなどの北欧諸国だ。輸送の効率化やドライバー不足の解消に加えて、脱炭素という「錦の御旗」を得たことで、ドイツ、オランダ、ベルギーなどでもなし崩し的に認可されている。ちなみに、後述する通り北欧ではさらに長いトラックが登場している。
そして、トラックの電動化が進むなか、この度、電動のエコ・コンビがオランダに初導入されたという次第である。
車両はDAFのバッテリー電気式(BEV)大型トラック「CFエレクトリック」の3軸単車+2軸ドーリー+3軸セミトレーラという組み合わせだ。また、コンテナ積載用とみられるヒアブ製クレーンをキャブバックに架装しているが、これも電気で駆動する。
ゼロ排出トラックで先進的な取り組みを進めるヴロト社は、25.25メートルのエコ・コンビを含め10台の電動トラックを所有しており、世界的なハブ港湾のあるロッテルダムには自社の充電ステーションも保有する。
同社のオーナーで社長のロクス・ヴロト氏のコメントによると、この車両は20フィート国際海上コンテナ(海コン)3台を同時に運べるため、運行回数の削減が可能だという。また、40フィートコンテナ1台+20フィートコンテナ1台という組み合わせも可能とのこと。
1回の充電当たりの航続距離は200~250kmを想定しており、これに合わせた運行スケジュールを組んでいる。ドライバーもBEVトラックの運転に慣れてきて、充電が必要になるタイミングなども完全に把握できるようになった。
ロッテルダムの充電ステーションはCFエレクトリックのバッテリーを1時間で80%回復させることが可能で、そのためのエネルギーの多くは敷地内に設置したソーラーパネルから得ている。社長曰く「完璧なサイクル」とのことだ。