■日産、トヨタ、パナソニックなど他企業の動向は?
「合意なき離脱」の先行きが見通せないなか、すでに、「ゴーン逮捕事件」で仏ルノーとの関係が揺れ動いている日産自動車は、英国のサンダーランド工場で生産を計画していたスポーツ用多目的車(SUV)「エクストレイル」の次期モデルの生産を取りやめ、日本の九州工場で生産することを発表した。
トヨタでも生産体制の見直しなどについて具体的な動きは示していないが、「合意なき離脱による影響の大きさと、積み増せる在庫量のバランスを考えても影響なく乗り切ることは至難の業」(トヨタ幹部)と判断しており、生産の一時停止も視野に入れている状況だ。
自動車メーカー以外でも、パナソニックが2018年10月に欧州拠点として本社機能を英国からオランダに移転。ソニーも欧州本社の登記をオランダに移す計画を急いでおり、英国外への流出に歯止めがかからない状況だ。
また、「英国離れ」は日本のメーカーばかりではない。米大手のフォード・モーターも英国での生産から撤退することを示唆しているほか、英ジャガー・ランドローバーも4500人の雇用を削減、独BMWも生産の一部をオランダに移管することを検討するなど現地に動揺が広がっている。
このため、1980年代当時のサッチャー政権のラブコールで、トヨタや日産とともにホンダも日の丸を背負って英国に進出したという経緯があるだけに、八郷社長としてもさらに刺激したくないとの配慮からも慎重な発言を繰り返していたようだった。
では、ホンダの欧州生産撤退の本当の理由は一体何か。ホンダの2018年の四輪車世界販売台数は約520万台。このうち、欧州での新車販売はわずか13万5584台と3%弱にとどまる。
トヨタグループの76万0069台、日産自動車の49万3862台の足元にも及ばないほか、世界販売が300万台規模のスズキでも欧州販売は約30万台、ホンダの3分の一以下規模のマツダや三菱自動車でも欧州での年間販売実績は20万台を超えている。
ホンダのグローバル戦略は、日本、北米、中国、アジア・大洋州、南米、そして欧州の6極体制で進化させてきたが、その重要な一極を占める欧州地域での苦戦が際立っている。
ホンダが2021年までに閉鎖を決めた英国工場は1985年に設立。3500人を雇用して生産能力は25万台規模だが、2018年は「シビック」のハッチバックモデルを中心に約16万台を生産したという。
ただホンダは、需要のある近くの国・地域での生産を重視しているが、英工場の場合は欧州向けが低迷しているため、英国を除くEU域内はわずか2割弱、地元の英国内でも15%にすぎず、7割近くは北米や日本向けで、現地生産どころか、もはや“輸出基地”との位置づけになっている。
しかも2014年には2つある生産ラインのうち、1ラインを停止するなど「地産地消」の原則とはかけ離れている。背景にあるのは欧州地域における鳴かず飛ばずの「四輪事業の失速」というお家の事情を抱えていることが大きな理由であり、その意味ではEU離脱と「関係ない」とも言い切れる。
ただ、何故このタイミングで発表したのか、である。
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