売れている車には、売れている理由がある。
多くの場合、人気車はユーザーを惹きつける魅力を備えているものだ。ただし、どんなに優れた車でも万能ではなく、多かれ少なかれ長所と短所がある。
そこで、本記事では各ジャンル人気車の売れている理由と知っておきたい死角を解説。
とりわけ売れている車は、より多くの人々が購入を検討するだけに、注意すべき点を知ったうえで車選びの判断材料としてほしい。
文:永田恵一/写真:編集部
※各車の販売台数は2019年3月のデータです。
日産 ノート/1万6647台
現行ノートはビッグマイナーチェンジ直後の2016年11月に日産車として30年振りとなる月間販売台数1位に大躍進。2018年にはついに年間販売台数1位の座に輝き、その勢いは未だに止まらない。
ノートが売れているのは、もともと万人向けのスタイルと広い室内という強みを持っていたところに「e-POWER」というハイブリッドを追加したことが最大の要因だ。
そのe-POWERは“電気自動車の新しいカタチ“という広告に疑問を感じるものの、それも「まんざらでもない」と感じる電気自動車的なパワフルかつ静かでスムースな走りが大きな魅力だ。
さらに売れている車だけに、停止まで対応する先行車追従型のクルーズコントロールやクロスオーバー的なシーギア、スポーツグレードのe-POWER NISMOやラグジュアリーなオーテック、4WD車を追加するなど、バリエーションの拡充も万全だ。
しかし、現行型は登場が2012年と古く、当時からトップクラスのコンパクトカーだったわけでもなく、乗り心地に代表される各部のも今一つな点など、古さは否めない。
また、3気筒となる1.2Lのガソリンエンジンと同スーパーチャージャー仕様に、特に魅力がないのも事実で、「乗り換える車がなくなっている日産ユーザーが、e-POWER効果で無難なノートに集まっている」というのが実情に感じる。
日産 セレナ/1万2420台
現行セレナは、特に高速道路での渋滞中の疲労軽減に貢献する「プロパイロット」、キャプテンシート的にも使える3人掛けの2列目シートやガラス部分だけも開けられるバックドアといった実用性の高さという武器を持っていた。
そこに、ノート同様のe-POWERやNISMO、オーテックといった変化球も追加されたのだから売れているのは納得できる。
だが、現行セレナは、2005年登場の2世代前モデルと同じプラットホームを使っていることもあり、フロアの高さが大きな弱点だ。
フロアの高さは、乗降性の悪さに始まり、高いところに座っている感じがして、ライバルのノア/ヴォクシーやステップワゴンが持っているピタっと走る感じに欠けるといった点に影響している。
全体的にはノートと同じく「インパクトはあるけど、質が伴っていない」というのが率直な印象だ。
トヨタ プリウス/1万5541台
現行プリウスは、歴代モデルの燃費の良さに加え、歴代プリウスの弱点だったハンドリングや乗り心地といった車の質の低さや自律自動ブレーキに代表される安全性が見劣りしていたネガを、新しいプラットホームやトヨタセーフティセンスの採用で潰し、売れているのはよく分かる。
しかし、弱点を挙げれば以下のように少なくない。
・他車の動力性能が向上しているのもあり、急な上り坂が続く道では相対的に動力性能の余裕に欠けることがある
・前席、後席ともに乗降性が悪く、後席のヘッドクリアランスも狭い
・ラゲッジスペースは底面積こそ充分だが、高さは意外に低い
・トヨタセーフティセンスがカローラスポーツのように夜間の歩行者にも対応した最新版ではない
・事故防止に絶大な効果がある斜め後方を監視する「ブランドスポットモニター」が上級の「A」グレードを選ばないと装着できない
2019年中に登場する3ナンバーボディを持つカローラセダンの出来次第では、現行プリウスの今後は意外に危ういかもしれない。
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