2019年5月17日、トヨタから新型スープラが正式に日本国内で発表された。いわゆる新車紹介的な記事はすでにアップされているので、ここではちょっと別の視点から新型スープラを見ていくことにしよう。
BMW Z4とは兄弟だけど別のクルマ
スープラがBMW Z4との共同プロジェクトで誕生したことはご承知だと思うが、チーフエンジニアの多田哲哉氏に話を聞くと、「皆さんが思っている以上に、Z4とは別のクルマなんですよ」と。
いわゆるプラットフォームは共通だ。直4、2Lターボ&直6、3Lターボエンジンも、8速ATのトランストランスミッションもBMWのものである。でも、「開発期間の後半2年……、ボディができてからの後、実車を前にボクはほとんどラップトップコンピューターをいじっているだけでしたよ」と多田チーフエンジニアは言う。つまり、エンジンもトランスミッションもハードはBMWのものだけど、チューニングはまったく異なっている、ということを言っているのだ。実際にスープラのエンジンを始動させてブリッピングすると、BMW Z4とは音も違えば吹け上がりのフィーリングも異なる。

開発の拠点はBMWの本社のあるミュンヘンだという。
「Z4の開発チームとスープラの開発チームはそれぞれ別の部屋でそれぞれの開発を進めていくわけですが、ではお互いにまったく我関せずでそれぞれのクルマを作り上げていくのかというと、もちろんそんなことはなく、要所要所で情報交換をして、必要な部分はお互いに協力し合って、でも外装のデザインはもちろんですが、操安性の味付けやパワートレーンのチューニングなどはそれぞれの目指すところで進めていったのです」と多田チーフエンジニアは開発現場の真相を明かしてくれた。
さて、そうして出来上がった新型スープラだが、エクステリアはZ4とはまったく異なる独自の世界。もちろんオープンのZ4に対しクローズドクーペのスープラだから、ルーフ周りのフォルムはスープラにしかないし、抑揚感のあるフェンダーラインなどもスープラのオリジナリティを感じる部分だ。




一方インテリアに目を移すと、ワイドに左右に広がるダッシュパネルの造形はZ4とはまったく異なるスープラオリジナルデザイン。だがATシフトノブのあるセンターパネル周辺の形状はZ4と似ている。ATシフトノブの形状は異なるけれどシフトノブの左側に配置されるダイヤル式のモニター操作コントローラーはBMWのそれだ。そうそう、ステアリングコラムの左サイドから伸びるウィンカーレバー、右サイドから伸びるワイパー操作レバーの形状や操作性もBMW流である。


メーターパネルはTFT液晶表示でグラフィカルなデザインが施されている。最近のBMWは新型3シリーズやZ4もそうなのだが、パネルの左側に速度計、右側にタコメーターが表示されるのだが、スピードメーターの指針は時計回りに針が上昇するのに対し、タコメーターは反時計回りに指針が上昇するデザイン。対称的なデザインで先進的ではあるが、正直言ってちょっと見づらいと感じていた。

スープラのメーターはパネル中央に大きくタコメーターが配置され、その左側にデジタル数字で速度が表示される。タコメーターの針は一般的な時計回りでホッとする。
でもやっぱりBMWっぽさもある
ちょっと面白いのは、ボンネットの開け方。運転席足元前方にあるリリースレバーを引くのは普通なのだが、2回引きなのがBMW流。“カチャカチャ”と2回レバーを引くと、フード先端左右にあるラッチのロックが解除されてスッとフードは開けられる。ちょっと開いたフード先端の隙間から指先を入れて解除するロック機構はない。スープラもこのBMW式フード開閉方式なのだ。

運転席を開いたBピラー側車体に貼り付けられている型式プレートがモロにBMWなのが印象的だった。表示フォーマットがBMW式なのに加え、「Made by BMW」と明記してあり、さらに「BAYERISCHE MOTOREN WERKE AG」とBMWの正式な会社名が刻印されている。トヨタ車なんだけどBMW製、さらに細かく言えばBMWの委託を受けたオーストリアにあるマグナ・シュタイアー社で製造されているためこのような表記になるのだ。さて、新型スープラ、その走りはどのように仕上げられているのか!? 試乗が楽しみだ。

