FCVがガス欠してしまったらどうすればいいのか?

FCVがガス欠してしまったらどうすればいいのか?

 今回のお題は「FCVがガス欠してしまったらどうすればいいのか?」だ。

 燃料電池自動車(英:Fuel Cell Vehicle 以下FCV)は、搭載した燃料電池で水素と空気中の酸素を反応させて発電して、モーターを動かして走る自動車である。排気ガスの代わりに、水を排出しながら走行する。

 トヨタから昨年11月に世界初となる量産型FCV『MIRAI』が市販されたが、肝心の水素ステーションはというと、次世代自動車振興センター発表の一覧によれば、都市部を中心に定置式を31カ所に設置、移動式が7エリア(14カ所)で運用となるが、合わせても45カ所ととても少ない。そんなインフラ環境では、心配なのがガス欠だ。

この水素残量計がEになったらガス欠!
この水素残量計がEになったらガス欠!  

 ガス欠は2012年のゴールデンウィークにJAFが出動した案件の12%を占める身近に起こりやすいトラブルだ。MIRAIであればカタログ値(JC08モード)で約650㎞走れ、エアコンなどを使用したとしても実走行で約500㎞は走れるだろう。

 100㎞程度しか走れないEVのように常に急速充電器を探さないといけないという不安がないから、ついつい遠出をしたくなる。だが走れてしまうがゆえに落とし穴があって、水素ステーションまで戻れないところまで来てしまってからハッ! と気づくかもしれない。

 北関東以北、東北エリアに水素ステーションは現状ひとつもない。そうなったらアウトだ。ガス欠になったら、どのような対応をすればいいか、トヨタ広報に聞いてみた。

■ガソリン車であれば、ガス欠と言われるが、FCVの場合は水素欠という呼び方になるのだろうか?

 「特定の呼び方は決まっていません。米国ではガソリンをガス(gas)と呼ぶことが多く、ガス欠はこれに由来します。水素は気体(ガス)ですので、ガス欠でいいと思います」

 なるほど、ガス欠と呼んで問題ないらしい。

■今回FCVを発売するにあたり、ガス欠の想定は?

水素充填 のコピー

 「ガソリン車やハイブリッド車と同様に、ガス欠になることはありうるのですが、ガス欠にならないようにご利用いただきたいと考えております。販売店装着のDCM付T-Connectナビとつながるサービスをご利用いただくことで、MIRAIをより安心・快適にお乗りいただける、水素ステーション情報、水素残量、走行可能範囲などを表示するサポート機能を追加した専用サービスが提供されますので、お客様にはお申し込みをおすすめしております」

 ■実際にガス欠を起こした場合、どうすればよいのか?

 「ガス欠時ですが、ハイブリッド車と同じように、駆動用バッテリーに電気が残っている場合は、数百mは走行が可能です。走行ができないような状態になってしまった場合は、レッカーで牽引していただきたいと思います。その際は、オーナーズマニュアルにも記載させていただいておりますが、電動パーキングブレーキにより前輪が固定されていますので、足踏み式のリア用パーキングブレーキを解除していただき、前輪を持ち上げた状態で牽引をしていただければと思います」

 FCVということで超貴重品を扱うような注意が必要なのではと想像していたが、通常のFF車同様の牽引方法で問題ないとのことだった。


 車両側の対応方法を聞いたところで、今度は現場での救援を担当することになる日本自動車連盟(以下JAF)に聞いてみた。JAFは、石油エネルギー技術センター(JPEC)と、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が進めるプロジェクトのひとつである「公道充填検討会」に’12年から参加し、FCVの公道充填に向けた問題点の抽出を行っている。

 ■現状のFCVのガス欠に対するロードサービスと課題はどのようなものなのか?

JAFが保有する2tサイズの移動給電車。
JAFが保有する2tサイズの移動給電車。  

 「現時点では公道や現場での燃料充填(水素充填)はできません。構造上は「EV」と同じですので、故障の場合応急処置の可否は30分を目安に判断し、お客様のご希望があれば最寄りの水素ステーションかディーラーなどへ牽引することになります」

 「将来的にはEV用移動給電車のような、移動水素充填車も検討していますが、装置をコンパクト化する技術がまだ研究段階にあります。また現行の消防法や高圧ガス保安法により、ガソリンと水素を同時に持ち歩けないことや、第一種製造事業所内か都道府県知事に届け出た場所でしか充填を行えないなど多くの課題が挙げられます。法令が改正されるか、法令の適用対象外に指定されないと、具体的な車両の仕様が決定できないため、現在確認を行っている状態です」

 水素ステーションを設置するにもいろいろな制約があるが、公道充填となるとさらに難しくなるようだ。

 ■今後のFCVの普及を前提に、JAFとしてはどのような活動を行っていくのだろうか?

 「昨年から各地方本部の教育担当を対象とし、FCVの構造や水素の特性を学ぶ研修を行っています。また本年からはFCVの実車を用いた具体的な研修を計画しています。JAFではお客様に満足いただけるロードサービスを提供するために活動してまいります」

 現状からみて、ガソリン車同様に現場で充填してもらえるようになるには、まだかなりの時間がかかりそうだ。

 手探りが続く水素エネルギー事業だが、EVとの二本柱で次世代自動車として成長させるためには安心して使える環境作りが急務で、すべての道府県庁所在地に水素ステーションがあるくらいが最低ラインだろう。ぜひ官民一体となりインフラ整備をスピードアップさせてもらいたい!!

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