こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 トヨタが本気のカスタム力を発揮したbBオープンデッキ

■ピラーレスの観音開きドアで開放感は抜群

 オープンデッキが狙ったのはあくまで独自性である。そもそもオープンデッキは、「bBをベースに自動車メーカーが本気でカスタムカーを作って売ってみた」と称していいクルマだから、実用性とか機能性といった一般的なクルマで重視される要件なんてどうでもいい。

 むしろカスタムカーと定義するなら、見る者をアッと言わせればそれでいい。そうした観点では助手席側に設けられた観音開きドアはインパクトを与える特徴のひとつだ。

 フロントドアを開けてからリアドアの室内側ハンドルで開けるという観音開きドア特有の所作はやや不便に思えるが、ピラーレス構造としたことで実現した広い開口部は、圧倒的な開放感をもたらすとともに、大きな荷物を車内に積載するときにも重宝した。

 ピラーレスとしたことでボディの剛性不足が懸念されたが、リアドア前側に太めのピラーを備えることでベース車と変わらない側面衝突安全性能を実現。トヨタの安全ボディである「GOA」の基準も満たしていたという。個性を際立たせているものの、インパクトだけを狙わないあたりが、さすが大メーカー・トヨタのカスタム事例と言えるポイントだ。

 車内のデザインはベース車を踏襲。直線基調のインストルメントパネルに、圧力ゲージをモチーフにした丸型センターメーターを配置。中央には各パーツを整然と並べて、すっきりとした印象に仕上げている。bBはフロントシートに左右独立でスライド&リクライニングするベンチタイプを採用していたが、オープンデッキは独立タイプに変更されて前後のウォークスルーが可能になっていた。

 走行性能はベースのbBとほとんど同じ。搭載エンジンは1.5Lの1NZ-FE型で、VVT-iや斜めスキッシュ燃焼室の採用で熱効率の向上を図り、ロングポートインテークマニホールドやロングブランチエキゾーストマニホールドで吸排気効率を高めたることで低中速での扱いやすさと俊敏な加速性能を両立。街乗りはもちろん、レジャーで遠出するという使い方でも不満を感じることはない。足まわりはフロントがストラット式、リヤをトーションビーム式としているのもベース車と同様だ。

助手席側のドアが観音開きになっていることも荷台と並ぶbBオープンデッキの特徴のひとつ。ピラーレス構造を補うための補強もしっかりと施されているのがポイントだ
助手席側のドアが観音開きになっていることも荷台と並ぶbBオープンデッキの特徴のひとつ。ピラーレス構造を補うための補強もしっかりと施されているのがポイントだ

 あらためて見てもお遊びで作ったカスタムカーのようだが、エアロパーツを装備したり、bBのエンブレムを専用の「OD(Open Deck)」に変えたり、内装をベース車と違う雰囲気に仕上げるといった見た目の変更だけにとどまらないのがオープンデッキのすごいところ。

 観音開きドアの採用にともなってボディをしっかりと補剛しているといった部分には、ウケ狙いとはいえどもハードは真面目に作る、という意気込みが垣間見られる。

 1999年の東京モーターショーに参考出品されたときから話題を集め、鳴り物入りで市販化されたbBオープンデッキだが、販売は思いのほか振るわず、登場から1年9ヶ月で姿を消すことになってしまう。

 「20Lのポリタンクが7個積める」と謳われていたことから、このクルマに実用性を期待し、裏切られたユーザーも少なくなかったはず。しかし、どう使っていいか悩んでしまう荷台の用途なんかは気にせず、ユニークな個性だけに着目して選ぶべきクルマであることは間違いない。

 bBオープンデッキが現代版となって再販されたとしたら絶対にウケる……とは断言できないが、こういうクルマこそが若者の心をグッと惹きつける可能性は大いにあるし、クルマのほうが若者から離れていったことによって生じたクルマ離れを克服できるのではないだろうか。

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