「【視界やシートで激変!?】疲れない車 自動車メーカーが考える条件は??」を読んでいると、「運転疲れ」の要因には実に様々なものがあることがわかる。
視界や振動、運転のしやすさ、シートの向き…さらにそれらから来る不安や緊張といったものまで考え合わせれば、それらをなるべく軽減して「疲れないこと」がどれだけ大事かもわかるだろう。
では、運転席に比べるとある意味、より快適さを求めていると言える後席はどうだろうか。
本田技術研究所・研究員へ「疲れない後席」について突撃取材。自動車評論家の渡辺陽一郎氏には、同じく「疲れない後席の条件」と、乗った人を疲れさせない優れたクルマたちをピックアップしてもらった。
※本稿は2019年5月のものです
文:渡辺陽一郎、ベストカー編集部/写真:Adobe Stock、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年6月10日号
■「疲れない後席」とは?
(本田技術研究所)
乗降時は後席シートが低すぎても高すぎでも「ヨイショ」となります。ですので、「シートは腰の高さ」をひとつの基準に置いています。
ミニバンなどの実際のシートの高さはそれより低く、60~70cmが日本人にとってスムーズに乗り降りしやすい高さ、ということですでに販売しています。
また、3列目シートがあるモデルではエレベーションといって、後ろへ段々と座面を高くする構造をとっています(シアターレイアウトという言い方もある)。
前方が見やすいと後席の人は開放的になり、疲れにくい。そういう配慮はしています。単に座面を高くするだけでなく、最近ではシートの形状を変えることも。
また、後席はひとつの姿勢で安定するより、自分の好みの姿勢をとりやすい、ということを優先する設計にしています。時にはお尻をずらし、横座りっぽくしたいこともある。
それらに対応するために、規制の少ないシートの形状にしています。疲れない後席にするための重要点ですね。
またリクライニングがない後席の場合、前方を自然に見せるために背の上部分をやや立てている。自然と胸が起きるようにしているわけです。
■後席が疲れないクルマ、どんなものがあるの?
(TEXT/渡辺陽一郎)
本田技術研究所による「疲れない後席」概念の一端がわかったところで、自動車評論家視点での「疲れない後席とは?」を。クルマを挙げながら、渡辺氏に語ってもらう。
* * *
疲れない後席の構造的条件は、乗員の背中から腰、大腿部をしっかり支えることだ。
前席に比べると、拘束感を弱めて、姿勢の自由度を大きくしたほうが好ましい。周囲の見え方は、囲まれ感が強いとクルマ酔いしやすくなり、見えすぎると不安を誘う。
後席の快適な車種はまずクラウンだ。セダンはミニバンと違ってシートアレンジがなく、背もたれと座面が固定されるから、座り心地を向上させやすい。低重心で左右に振られにくい。
クラウンはシートと足まわりの硬さが適度で、周囲の見え方もちょうどいい。後席を重視したから、頭上と足元も広い。
このほかレジェンドも快適だ。頭上や足元の空間も広い。改良を受けて乗り心地も快適になり、長距離移動にも適する。またレガシィB4もいい。優れた走行安定性は乗り心地にも利いて快適だ。
ミニバンではアルファード&ヴェルファイアのベンチシートがいい。エグゼクティブラウンジシートは、オットマンを持ち上げた時でも腰を落ち着かせるため、座面の前側が大きめに持ち上がる。
それにより大腿部を圧迫されやすい。シートの内側に電動機能を内蔵したから、通常の座り心地は意外とよくない。
シート生地は、本革は伸縮性が乏しく、布のほうがしなやかで快適だ。
本場のリムジンでは、前席は耐久性を考えて本革を使い、後席は柔らかいウールモケットになる。そのことからも、わかる。
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