首都高「山手トンネル」の誕生秘話。なぜ中央環状品川線開通まで50年もかかったのか?

アクアトンネルの約3倍、日本一の距離を掘り進めたシールドマシン

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中央環状線の掘削に使われたシールドマシン。この1機で、8㎞もの距離を掘り進めた 出典:首都高速道路

 そして、この山手トンネルを語るうえでもうひとつ欠かせない秘密がある。それは、トンネル掘削に使われたシールドマシンについてだ。そのシールドマシンは世界最大級と資料に記載されていて、外径は12.55m、重量約2000tというスペック。

 ……と言ってもイメージしづらいので、参考までに調べてみたところ、東京湾アクアラインに使われたシールドマシンの外径は14.14m。

 外径こそアクアラインのほうが大きいものの、「中央環状品川線シールドマシンの掘進延長は約8km。アクアラインの掘進距離約2.5kmの約3倍で、道路トンネルを1基で掘り続けた距離としては日本一」(同上)なのだという。

目には見えないけど……じつは右側通行なんです

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五反田入口では、上を走る一般道の山手通りと、山手トンネル内の首都高中央環状線の進行方向を逆転させることで、左から合流できるようになっている 出典:首都高速道路

 さらに、目には見えない工夫も施されている。実は山手トンネル、進行方向の左側に反対車線がある“右側通行”なのである。トンネルなので当然ながら対向車線は見えないが、なぜこのような特殊な構造なのか? 

 その裏には「クルマの流れを円滑にするため」と「安全のため」という2つの理由がある。具体的な理由は次のとおりだ。

 「(右側通行としたのは)五反田出入口部で、左側車線での分流・合流が可能になること。

 また、緊急時に車を降りて避難する際、右側車線を横断することなく、左側車線から反対方向のトンネルに避難することを可能にするためです」(同上)

 なるほど、この構造なら「流れの速い右側車線にスピードの遅いクルマが合流し、渋滞を引き起こす」という“首都高でありがちな渋滞パターン”も発生しづらいというわけだ。

 こうして、高架式の計画から始まった中央環状線は、公共空間の地下を生かしたトンネルとしてやっと開通に漕ぎ着けた。そこには数々の苦労とトンネルだからこそ実現できた工夫が詰まっているのだ。

大井JCTの分岐。当初から山手トンネルの計画があれば、このような分岐構造にはなっていなかったかもしれない
大井JCTの分岐。当初から“高架式の中央環状線”ではなく、“山手トンネル内を走る中央環状線”と接続する計画があれば、このような分岐構造になっていなかったかもしれない

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