首都高「山手トンネル」の誕生秘話。なぜ中央環状品川線開通まで50年もかかったのか?

首都高「山手トンネル」の誕生秘話。なぜ中央環状品川線開通まで50年もかかったのか?

 これは首都高大井JCTの手前、昨年開通した中央環状品川線「山手トンネル」出口付近の写真。約50年前の検討案どおりなら、ここはトンネルではなく青空が広がる「高架」となるはずだった。

 50年の歳月を経て、山手トンネルが建設された背景にはどんな歴史があったのか? そして、完成したトンネルにはどんな工夫が施されているのか?

 文:WEBベストカー編集部/写真:ベストカー編集部、首都高速道路


計画変更の末に“ようやく”完成した山手トンネル

 2015年3月に大橋JCT〜大井JCT間の中央環状「品川線」部分がようやく開通し、先に開通していた中央環状線「新宿線」部分と併せて、“日本一長いトンネル”となった山手トンネル。

 その全長は約18.2kmあり、2位の関越道・関越トンネル(約11.0km)を約7km以上も上回る長さだ。

 さて、「ようやく開通し……」と書いたのには理由がある。もともと圏央道、外環道、中央環状線の「3環状」の整備については、都心部の渋滞を改善するため、1960年代から計画が進められてきた。

 にもかかわらず、山手トンネルの完成で中央環状線が全戦開通したのは昨年の2015年。その完成までかなりの時間を要したからだ。

 国土交通省の資料を読むと、中央環状品川線の事業計画は1970年に検討が進んだものの、計画決定には至らず計画は休止になったと記載されている。どんな経緯があったのか? 

 その裏側を知るべく、首都高速道路に取材を試みた。

当初は高架式を計画。中央環状線が難産だった3つのワケ

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目黒川の上を走る東急東横線(中目黒駅付近)。中央環状線が当初の高架式で進んでいたら、東横線の上に首都高があったかもしれない。現在の中央環状線はこの地点から約50m脇を通る山手通りの地下を走る

 まず、一番最初の計画では、どのようなルートを通る路線になる予定だったのか? 首都高速道路広報課によれば、

 「昭和40年(1965年)代の調査開始時点では、目黒川上空を高架式で整備する案を検討していました」

 とのことつまり、当初案に山手トンネルは存在せず、目黒川上空に高架式の道路を建設し、湾岸線から渋谷線を結ぶ計画になっていたのだ。それが「環境問題や住民運動などから都市計画決定まで至らず休止した」(首都高広報課)のだった。

 その後、1990年に調査が再開され、周辺住民の反対や地域環境を考慮した新計画を練る過程で、地下トンネル案が浮上。ここで初めて「山手トンネル」計画が生まれたのだ。

 ところが、その山手トンネル計画が正式決定されたのは今から僅か12年前の2004年のことだった。

 「大橋から大崎付近までの区間は山手通りの地下、大崎付近から大井までの区間は目黒川の地下を通る計画で、2004年11月に都市計画が決定しました」(同上)

 こうして山手トンネルは紆余曲折の末、ようやく建設が決定した。ではなぜ、そのルートは山手通りと目黒川の地下を通るのか? これは主にコストと工期の問題が絡んでいる。

 「中央環状線(湾岸線~3号渋谷線)のルート選定は、コスト縮減・工期短縮の観点から、公共空間を極力活用する基本方針となっています」(同上)

 首都高の回答は上のとおりだが、「人の移転がなくて済む」ことは、住民運動で計画が頓挫した経緯から、計画の実現に不可欠な要素。目黒川と山手通りの地下という公共空間を使うことで、山手トンネルは日の目を見たといっても過言ではない。

  つまり、山手トンネルの完成がここまで難航した背景には

  •  
  • 1.当初はトンネルではなく高架式の道路を建設する計画で、これも1965年に白紙となった
  • 2.その後、約20年に渡ってルート選定などの調整に難航。正式に調査が再開されたのは1990年
  • 3.公共空間を極力活用する山手トンネル案が正式に決定したのは2004年
  • という3つの大きな理由があるのだ。
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図は山手トンネルのうち大井〜大橋JCTの品川線区間のルート。大崎駅付近までは、目黒川の40m地下にトンネルが掘られ、そこから大橋JCTまでは山手通りの直下を通っている 出典:首都高速道路

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