2025年7月23日(米東部時間)、ホワイトハウスは公式Fact Sheetで「日本からの完成車輸出にかかる関税を27.5%から15%に引き下げる」と発表した(日本時間では7月24日未明)。自動車の対米関税率は「15%」とされ、この報道を受けて日経平均株価は急騰。内容が報道された23日からぐんぐん上がり、24日には約1年ぶりに最高値4万2000円台をつけた。これは日本の自動車メーカーにとって福音となるのか? 日米の自動車産業全体にとってどういう影響があるのか? 以下、これまでのニュースと背景に解説を加えて紹介します。
文:ベストカーWeb編集部、画像:AdobeStock、首相官邸
「勝ち負けでいえば、大勝利」
2025年7月23日、米ホワイトハウスは「日本からの完成車輸出にかかる関税を現行27.5%から15%に引き下げる」と公表。これは、8月1日の追加関税発動を回避し、日本側からの5500億ドル(約80兆円)の対米投資や農産物市場開放を引き換えにまとめられた合意といえる。
これらの発表を受けて、7月23日の日経平均は前日比3.7%高の41,070円台をつけ、輸送用機器セクターが10%超上昇。トヨタ株は約14%高、マツダ株は約18%高を記録した。さらに7月24日には、東京市場で日経平均が寄り付き直後に486円高の41,657.98円、一時は500円超高の42,000円台をつけ、昨年7月以来の高値圏で推移している。
この「日米関税交渉合意」は米トランプ大統領と赤沢亮正経済財政・再生大臣との交渉・会談によるもので、日本側は政策金融による最大5500億ドルの資金枠をもうけて、対米直接投資を拡大することも合わせて発表。

この巨額の投資枠は、「半導体、医薬品、鉄鋼、造船、重要鉱物、航空、エネルギー、自動車、AI(人工知能)・量子等、経済安全保障上、重要な分野について、日米がともにに利益を得られる強靱なサプライチェーンを構築していくため」(首相官邸での石破茂総理会見での発言)に利用される。
日本製完成車の基本関税率はもともと2.5%だったが(米→日は0%)、2025年4月3日からトランプ政権のSection 232措置(25%)が発効し、従来分と合わせて合計27.5%となっていた。これが合計15%になる、と決まったわけだ。日米の相互関税15%という税率は、対米貿易黒字国の中では(現時点で)最低水準を獲得したことになる。
一部報道によると、この関税の引き下げにより主要日本自動車メーカー7社合計の関税負担が約1兆6000億円ほど圧縮される見込みとのこと。対米関税リスクにより、2025年度決算で軒並み厳しい予測と数字を挙げていた日本自動車メーカー(トヨタとスズキ除く)にとっては、今回の「合意」で大きな好影響を受けると見られる。
自動車メーカー幹部は当編集部の一部オンレコ取材に対し、「勝ち、負け、引き分けでいうと大勝利といえる。まったく先行きが見えない状況が続いてきた中で、光明が見えた。とはいえもともとは2.5%だったわけで、これで決着、永続的に15%ね、と言われると困るし、そもそも【やっぱり25%にしよう】、【気に入らないから50%】といつ言われるかわからない状況は続くので、対米輸出事業が大きなリスク要因となってしまったことは変わらない。現地生産やサプライチェーン強化、主要市場の分散化を含めて、企業体力の土台を固めていくしかない」と答えた。




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