昨年、日本で売れた軽自動車、輸入車を除く乗用車の56%以上がトヨタ(&レクサス)車。
この強さの理由はどこにあるのか? また、他社はつけいる隙がないのか? 自動車評論家の鈴木直也氏が分析する。
文:鈴木直也
ベストカー2017年4月10日号
実はトヨタが最も国内ニーズに応えている
トヨタのシェアが拡大するのと反比例するように、日本の自動車市場は縮小を続けている。
消費税増税前の駆け込み需要など外的要因によるデコボコを別にすると、年間800万台弱を売ったバブル期から一貫して右肩下がり。
2016年は500万台割れが話題になった(ただし、登録車は翌年に予定されていた消費税増税の影響なのか、珍しくプラスに反転。消費税増税は延期されちゃったけどね)。
こういう逆風トレンドのなかで、トヨタだけが孤軍奮闘している理由はものすごく単純だ。
要するに、日本の自動車メーカーのなかで、トヨタが最も国内市場に真剣にコミットしているということ。具体的にいえば、日本のユーザーが好むクルマ、求めるクルマを真面目に開発し、それを世に送り出しているからだ。
そんな当たり前のこと「どのメーカーでもやってるでしょ?」とお思いだろうが、実は最近それが難しくなってきている。
業界全体でみると日本メーカーのグローバル生産台数は約2700万台。うち、国内で生産されるのは三分の一の930万台だ。国内で生産されたクルマも、その半分の450万台が輸出にまわされる。
つまり、日本市場向けのクルマは業界全体のわずか16%で、さらにその4割が軽自動車なんだから、ざっくりいうと、本当に日本向けに作られたクルマ(軽を除く)は全体の10%ほどしかないのが現状なのだ。
地元とはいえ、わずか1割シェアのマーケットに向けて、どれだけ真剣にクルマを開発できますか、ってことですよ。
特殊な日本市場への対応はメーカーにとっても重荷
日本の自動車市場というのは、年間500万台以上とそれなりの規模があるから、日本に住んでいると全然特殊だとは思わないけど、その中身はかなりのガラパゴス。
その代表が約4割のシェアを占める軽自動車と、販売ランキング上位を占めるファミリーミニバンの数々。あ、そうそう、ハイブリッド車の比率も日本は異常に高いな。
だから、海外へ出ると街中で見かけるクルマの景色がずいぶん異なるのが新鮮。われわれのクルマ社会は、世界的にみるとかなりユニークなわけです。
こういう特殊なマーケットに真面目に対応しようとすると、企業としてはお金を稼ぐ効率が落ちるのが困りもの。
だって、日本市場専用に開発したクルマは、お金も手間もものすごくかかるのに、グローバル市場ではまず通用しない。その比率が1対9じゃ、メーカーだってやってられません。
苦肉の策として、海外向けに企画(あるいは生産)されたクルマを日本市場に転用するケースもあるけど、こういうクルマは成功したためしがない。
クルマ選びの目が肥えているという意味でも、日本のユーザーはかなり特殊。安直な対応はすぐに見透かされてしまう厳しさがある。
トヨタは全国5000店のディーラー網を食べさせていかなくちゃならないこともあって、日本市場に対する取り組みがライバルより圧倒的に真剣。
海外モデルの転用なんてことを他メーカーがやってるようじゃぁ、トヨタのシェアはますます増えるばかりじゃないですかねぇ?
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