関税・資源・物流…激動の2026年に「オールハンズで!!」自工会・佐藤恒治新会長が語った日本の勝ち筋

共同物流とDXで生産性を底上げ

 物流問題、いわゆるトラックドライバーの労働環境悪化と人手不足についての質問もあった。佐藤会長は「現場で見たギャップ」を率直に語った(佐藤新会長は実際にトラックの荷捌き現場へ何度も訪問している)。そこで見た実感は、ドライバーの荷役作業や待機が「想像以上に多い」、積載率も「かなり低い」とのこと。 かつてはジャストインタイムの“適正”だったとしても、社会環境が変わった今はやり方を変える必要がある。

 佐藤新会長の考える処方箋は、共同物流とDXだ。どのトラックがどの荷をどれだけ積み、どこを走っているのか――ここを「見える化」できれば改善余地はまだまだある。そういうノウハウが、たとえばトヨタにはある。いまは情報の秘匿性の壁があるが、それを「ブレイクして」、データで物流を最適化する。 さらに運行ルートの規制なども含め、国との連携で効率を上げていく考えを示した。

 希望が最も“未来”に振れたのは、ものづくり×AIの話だ。いま「ロボティクスが景色を変える」と言われるが、佐藤会長の実感として「人間っぽい機械がアームを動かして、部品を組み立てる……? ものづくりの現場はそんな簡単なもんじゃない」と強調。

 佐藤会長に言わせれば、ロボティクス技術の本命は「ハードではなくソフトだ」とのこと。現代のものづくりの現場の品質保証作業は「暗黙知の塊」で、その暗黙知をどうデータ化し、どうロボットへインプットできるか。

 AIは食べるデータで育つ。日本の現場に眠る「ものづくり」の尊い暗黙知をデータ化してAIに“食わせる”ことができれば、日本にしかない学習環境が生まれる。そこで育ったフィジカルAIが、労働人口が減る時代でもハイクオリティなものづくりを支え、産業の勝ち筋になる――。

「台数の成長=産業の成長」という評価軸も見直すべきだ、と踏み込んだのは象徴的だ。 「無形の価値」を武器にする発想が、ここにある。

電動化戦略・BEV普及は「顧客・インフラ起点」で

 最後は弊メディア(ベストカー)からの質問として、電動化戦略が語られた。

「電動化戦略について、特に日本におけるBEVの普及について考えをお聞かせください。いま中国はBEVが約33%、欧州は15%、米国で10%くらいですが、いっぽう日本は2%未満です。それでも2050年にはカーボンニュートラル社会にしなければいけない。こうした状況を踏まえて、日本自動車工業会の会長としては、どのような脱炭素化への道を描いてゆくのか、お聞かせいただければと思います」

 佐藤会長の回答は以下のとおり。

「世界中のBEV普及率を細かく見ると、まだまだ国主導、官製需要なんです。これは調べてもらえば分かるのですが、その国がBEVに手厚く補助金を付ければ売れて比率が上がり、補助金を下げれば売れなくなって比率が下がる。市場が【お客さま】主導になっていない。クルマって、欲しいから買う、必要だから買う、人生が豊かになるから買う、というものでしょう。これまでBEVはそうなっていなかった。

 マルチパスウェイの考え方から、BEVだけに固執しません。一方でBEVも解の一つであり、一定量は市場に届けねばなりません。そこで重要なのは、お客さまの心が動く、乗るべき価値のあるBEVをつくることです。政策誘導で煽られるのではなく、顧客の価値を軸にするべきです。いま日本のメーカーはやっと「そういうBEV」を作れるようになってきて、ここをどう磨いていき、届けてゆくか、という話だと思います」

 と強調。そして「そのうえで」と佐藤会長は続ける。

 BEV普及(日本市場における普及の遅れ)の根っこにあるのは「エネルギーセキュリティ」と見ていると語る。

 これまでは「石油」が世界のエネルギー流通の土台にあった。だからガソリンで走るクルマ、軽油で走るクルマが世界中で売れた。ではそれが「電気」になったとき、石油と同程度のエネルギーグリッドとなり得るか。日本のエネルギー環境を踏まえ、どの速度でトランジションすべきかを慎重に考える必要があるという。

 そのうえで、BEV普及の条件として、①充電インフラ、②サステナビリティ(電池資源の循環)を挙げた。充電できる環境が当たり前にならなければ普及は進まないし、電池の循環が成立しなければビジネスはサステナブルにならない。だからこそ、電池のサーキュラー領域は「業界を挙げて取り組むべきですね」とした。

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