■トラックドライバーの目からするとどう映ったか!?
そんなスペックだけ見たらどこぞのスポーツカー並みの性能を有するSemiだが、ぶっちゃけた話、そんな性能はトラックには不要ではないかというのが編集担当の正直な感想。
当然加速を競う使い方はしないにせよ、EVとトラックの相性には少しばかし疑問がある。実はEVのトラックはこのSemiが初めてではない。
日産が完全EVのトラックをすでに開発している。その名も「e-NT400」。担当は以前このトラックに乗ったことがあるのだが、その車両はベースがリーフなのだな、ということをすぐに実感できる車両だった。
センターコンソールにはリーフのシフトチェンジャーとメーターパネルがあったからだ。ただし乗り味は非常にどっしりしていて、加速感もよく、騒音も同じトラックに比べれば限りなく静か。ただし航続距離は60km程度とかなり短く、町内の運送用といったところだった。
全国を走るベストカー本誌でもおなじみの長野潤一氏にドライバー視点でこのSemiを語っていただきました。
「スペック的にはここまでの動力性能は不要かと思います。そこにパワーを使うのならば航続距離をぜひ伸ばしてほしいです。現在日本で走るトレーラーはだいたい420psあたりが標準なのですが、総重量36tだと5%の勾配で80km/hを出すことができないくらいです。
しかしこれはネガティブなことではなく、燃費の向上にも役立ちます。例えばですが90km/hで走ると80km/h時と比較して燃費が1割も違いますから」。
あれだけ大きいトラックだけに速度が上がれば空気抵抗もドンドン増える。そのため、法定速度80km/hがベストの燃費だそう。そのためSemiのようにハイスペックばかり謳うのはドライバーとしては少し違和感を覚えるようだ。また積載量に関してもひとつ指摘したい事項があるという。
「以前国内メーカーがハイブリッドの大型トラックを試作しました。しかしバッテリーなどのハイブリッド機器だけで500kgほどあり、それは積載量が500kg減ってしまうことになります。結局市販はされなかったのですが、ハイブリッドでも500kgの重量であればEVだと全体の十tりょうがどうなるのか疑問です」。
たしかにバッテリーの重量は気になるところ。ちなみに先代リーフだとバッテリーの重量は300kg程度といわれており、これが大型トラックになるといえば軽く1tを超すと思われる。
テスラはバッテリーの重量などを公表しないことでも有名だが、積載重量との兼ね合いも大きな課題になりそうだ。最後にずばり日本でEVトラックは受け入れられるか聞いてみた。
「日本ではすでに実証実験も始まっていますが、短距離の市内の輸送というものがEVトラックの主戦場になると思います。ただ今回のSemiのように500km程度の航続距離があれば、東京〜名古屋などの中距離輸送なら使うことはできそうです。
充電を考えれば運行パターンの決まっている定期運行をする配送での使用が真っ先に始まるのではないでしょうか。あとは航続距離をいかに伸ばすか、たとえば600km走れれば東京〜大阪の運行も可能になるかもしれません」。
意外にもEVトラックの需要もありそうだ。プロのトラックドライバーからすれば目的地に確実に安全に到達することが一番重要であり、テスラのアピールしているスペック競争とは明らかに違う。そのギャップをいかに埋めていくか、それ次第で国内でもSemiの活躍が見れそうだ。
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