車を使った「自由な移動」を監視して良い?
プライバシーの観点からは、みだりに撮影されないだけでなく、車を使った自由な移動も欠かせないし、自己情報のコントロール権の視点からすると、車両の移動や走行の方向は自己情報の重要な要素である。
犯罪に関わらない善良な市民の移動の自由や自己情報を侵害することは許されないはずだ。
国側は、「移動の自由を物理的に妨げていないし、ナンバーはプレートで公になっているのだから自己情報を制限したことにはならない」などと裁判で主張しているが、公権力が普通の市民を監視し、チェックしていること自体が正当な理由があるとは言い難いし、これに伴う自由な行動を委縮させ、抑止する危険も高い。
犯罪捜査のためならプライバシーも無視して、何でもやっていいというのは、自由で民主的な国のあり方とは言えない。
もし必要があるとすれば、盗難車両や手配車両などに厳しく限った立法を用意して対処するほかないだろう。Nシステムには根本的な改革と改善が不可避だ。
◆田島泰彦(たじまやすひこ)
1952年生まれ。1999年より上智大学文学部新聞学科教授を務め、憲法・メディア法を専門に研究、新聞・雑誌などで執筆活動も行う。主な著書は「この国に言論の自由はあるのか」(岩波書店、2004年)など。上智大学退任後の現在も早稲田大学非常勤講師を務める。
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