Nシステムって合法なの!? 身近に潜むナンバー読み取り装置の是非 識者の見解は?

Nシステムって合法なの!? 身近に潜むナンバー読み取り装置の是非 識者の見解は?

 速度違反を取り締まるオービス同様、高速道路や一般道を車で走っていると、よく見かけるのがナンバー自動読み取り装置、通称「Nシステム」だ。オービスと似た見た目ながら、このシステムの恐ろしさは、ある車が「いつ、どこを通って、どこへ向かったか」という情報が全て自動的に記録されてしまうことだ。そもそも何の違反もせず、普通に走っている車やドライバーを勝手に記録してよいのだろうか。専門家の見解は?

文:田島泰彦(早稲田大学非常勤講師、元上智大学教授)
写真:編集部


似ているようで違うオービスとNシステム

こちらは「LHシステム」タイプのオービス。Nシステムと形状がよく似ていることがわかる
こちらは「LHシステム」タイプのオービス。Nシステムと形状がよく似ていることがわかる

 共謀罪の創設をはじめ、市民監視を強める動きが進んでいる。

 そういうなか、防犯カメラと称して、ATM、コンビニ、駅、商店街、学校等、無数に増殖し、稼働していることはすでに日常風景になってさえいる。

 道路上の車もカメラで撮影され、捕捉されてきた。典型的な例が、Nシステムである。

 正式名称は「自動車ナンバー読み取り装置」で、犯罪捜査のため、主要国道や高速道路で通過するすべての車両を24時間撮影し、記録している。全国でおよそ2000箇所近く設置され、稼働している。

 Nシステムは、盗難車両の捕捉と手配車両確認・犯罪捜査と説明されるが、道路上のカメラには他の種類のカメラもある。

 よく似ているが違うものとして、オービス(自動速度違反取締装置)があり、対象は速度違反をした車のナンバーとドライバーだけを撮影し、記録する点でNシステムとは異なる。

 もう一つは、Tシステム(旅行時間測定システム)があり、これは渋滞情報や道路の通過情報の配信などの目的で通過車両を撮影し、通過時間を調べる仕組みだが、NシステムからもTシステムの情報が取得でき、連動している。

Nシステムに潜む問題点とは?

高速道路上に設置されたNシステム。ここを通過する車のナンバーはもちろん、ドライバーの顔までも撮影・記録されている
高速道路上に設置されたNシステム。ここを通過する車のナンバーはもちろん、ドライバーの顔までも撮影・記録されている

 それでは、こうしたNシステムには問題はないのだろうか。いろいろな点で問題がありそうだ。現にNシステムに対してプライバシー侵害による損害賠償の訴訟まで提起されてきた(最高裁の判断はまだないものの、司法はNシステムを是認してきた)。

 私たちの憲法には、「プライバシーの権利」とは明示していないものの、一般に13条が記す「幸福追求の権利」の一部としてそこに含まれていると理解されてきたし、最高裁もみだりに人の肖像を撮影することは憲法上の自由を侵害する旨判断してきた。

 また、コンピュータ社会の到来とともに、自己の情報を自分がコントロールする権利としてプライバシーの権利を再構成する動きも強まっている。

 ここからすれば、車上にある犯罪とは無関係のドライバーの顔を撮影し、記録することはプライバシーの権利の乱暴な侵害と言わざるを得ない。

 なお、訴訟の中で国側(警察側)は撮影し、記録しているのはナンバーだけで、ドライバーの肖像は撮影、記録していない旨主張しているが、盗難車両や犯罪捜査を目的とするNシステムからドライバーの肖像を撮影し、記録しないというのはにわかに信じ難く、逆にそうでない旨の立証が国側に求められるよう。

車を使った「自由な移動」を監視して良い?

いつでも、どこでも、思いのままに移動できる。そんな車の「自由」が監視されていよいのだろうか(Photo/Shutter stock.com)
いつでも、どこでも、思いのままに移動できる。そんな車の「自由」が監視されていよいのだろうか(Photo/Shutter stock.com)

 プライバシーの観点からは、みだりに撮影されないだけでなく、車を使った自由な移動も欠かせないし、自己情報のコントロール権の視点からすると、車両の移動や走行の方向は自己情報の重要な要素である。

 犯罪に関わらない善良な市民の移動の自由や自己情報を侵害することは許されないはずだ。

 国側は、「移動の自由を物理的に妨げていないし、ナンバーはプレートで公になっているのだから自己情報を制限したことにはならない」などと裁判で主張しているが、公権力が普通の市民を監視し、チェックしていること自体が正当な理由があるとは言い難いし、これに伴う自由な行動を委縮させ、抑止する危険も高い。

 犯罪捜査のためならプライバシーも無視して、何でもやっていいというのは、自由で民主的な国のあり方とは言えない。

 もし必要があるとすれば、盗難車両や手配車両などに厳しく限った立法を用意して対処するほかないだろう。Nシステムには根本的な改革と改善が不可避だ。

◆田島泰彦(たじまやすひこ)

 1952年生まれ。1999年より上智大学文学部新聞学科教授を務め、憲法・メディア法を専門に研究、新聞・雑誌などで執筆活動も行う。主な著書は「この国に言論の自由はあるのか」(岩波書店、2004年)など。上智大学退任後の現在も早稲田大学非常勤講師を務める。

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