【エスティマら7年超経過】フルモデルチェンジ周期が長くなってきたのはなぜか? 


■平均使用年数が伸びている

車両本体にも同様のことが当てはまる。2000年頃からは輸入車を含めて各部の装備やメカニズム、塗装などが丈夫になり、クルマの平均使用年数(クルマの平均寿命)も伸びている。

1978年における乗用車の平均使用年数は8年以下だったが、1988年には9年を上まわり、2000年には10年、2006年には11年を超えた。今は約13年だから、40年前の1.7倍に伸びている。そうなればフルモデルチェンジのサイクルが、10年では長すぎるが7年程度になっても不思議はない。

『わが国の自動車保有動向』(自動車検査登録情報協会刊)より。平成29年(2017年)3月末時点で、乗用車の平均使用年数は12.91年
『わが国の自動車保有動向』(自動車検査登録情報協会刊)より。平成29年(2017年)3月末時点で、乗用車の平均使用年数は12.91年

このほか安全性の向上、自動運転も視野に入れた運転支援技術の開発、電動化を含んだ環境技術の進化など、将来を見据えた投資も重要性を増した。これに冒頭で述べた海外市場向けの商品開発も加わり、国内市場が犠牲になって設計の古い車種が増えてしまった。

従ってフルモデルチェンジ周期の長期化、基本設計の古い車種が増えたことのメリットは、メーカーの経済的な負担が軽くなることだ。

日本では設計の古いクルマを売り続け、新興国には新型車を投入して売れ行きを伸ばし、先進技術も進化させる。1980年代まで日本車を育てたのは日本のユーザーだが、その我々を踏み台にして、今のメーカーは海外で業績を伸ばすのだ。この成功の一端を支えるのが、国内向け新型車の欠乏と、設計の古い車種の増加になる。

■プラットフォームは日々進化・熟成させることが可能

「ひとつの車種を長く造り続ければ熟成が進む」という見方もあるが、それは車種そのものではなく、プラットフォームなどの話だ。

例えば三菱エクリプスクロスのプラットフォームは、2005年に発売された先代アウトランダーと共通だ。今では解析が十分に行われ、どこを補強すればいかなる効果が得られるのか、改良の仕方と効果が明確になった。

そこでエクリプスクロスは、構造用接着剤の効果的な使用などによって、ボディに効果的な補強を施した。足まわりも同様にチューニングされ、走行安定性と乗り心地のバランスが優れている。

三菱エクリプスクロスは今年3月発売だがプラットフォームはアウトランダー等と同じ
三菱エクリプスクロスは今年3月発売だがプラットフォームはアウトランダー等と同じ

またトヨタの新しいTNGAの考え方に基づくプラットフォームを新採用したプリウスは、先代型に比べて操舵感が正確になってよく曲がるが、危険回避時には後輪の接地性が甘い。前後のグリップバランスが前輪側に寄っている。

そこが同じプラットフォームを使うC-HRでは、重心を高めながらも優れた動きを見せる。開発者は「C-HRはプリウスよりも1年遅く発売され、ショックアブソーバーの銘柄も変わり、走りを熟成できた」という。

こちらはトヨタC-HR。プリウスと同じプラットフォームを採用
こちらはトヨタC-HR。プリウスと同じプラットフォームを採用

ただしそれでも古いプラットフォームを使えば、軽量化や電動化への対応、衝突安全性の向上では不利になる。

そして最先端の安全装備も、設計の古い車種は装着しにくい。エスティマはLサイズの上級ミニバンなのに、2016年6月のマイナーチェンジで追加装着された緊急自動ブレーキは、歩行者を検知できないトヨタセーフティセンスCであった。この時点でエスティマは発売から10年を経過しており、上級のトヨタセーフティセンスPは装着できなかった。

つまりフルモデルチェンジ周期の長期化、設計の古い車種が増えたことのメリットは、メーカーの経済的負担の軽減だけだ。あとは強いて挙げれば、売却時の価値を下げないことだろう。初度登録から7年を経過しても現行型の状態であれば、フルモデルチェンジを受けて先代型になった場合に比べて、好条件で売却しやすい。もっともこれは、その車種を新車で買うユーザーのメリットではない。

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