半導体、部品の供給不足によりクルマの生産は滞ったまま。結果、異様な長さの新車の納車待ちも発生していて、自動車産業は混乱に陥っている。何が起きているのか? 自動車経済評論家・池田直渡氏が解説する。
※本稿は2021年10月のものです
文/池田直渡
写真/トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ
初出:『ベストカー』2021年11月10日号
■大減産の原因はどこにあるのか
各社から次々と発表される自動車の大減産。すでに報道されているように、その原因は部品不足である。自動車はおよそ3万点の部品で構成されていると言われているが、そのうち1点でも部品がなければ生産できない。
極めて精密で高い技術が求められる部品が限られた一部のサプライヤーにしか作れないことは誰もが納得できるが、例えばプラスチックの成形部品のようなものであれば、ほかからも簡単に調達できるのではないかと、考えるのは普通である。
しかし、実はことはそんなに簡単ではないのだ。部品を作ろうと思えば、最低限、電気と水が途切れることなく供給されるだけのインフラが整い、マニュアルに従って作業ができるだけの教育水準も求められる。それらは下側の足切りなのだが、それを越えていればどこでもいいというわけにはいかない。発展度が高すぎる国や地域では人件費が高い。それは当然、部品の安価な供給を妨げることになるので許容できない。
さらに言えば、個別の部品はいくつかが集められて組み立てられ、サブアッセンブリーになり、それらのサブアッセンブリーが組み合わさってアッセンブリーに、最終的にそれが車体に組み付けられてクルマはできる。このそれぞれの過程で国境を跨ぐ輸送が行われることが実は多いのだ。
少し乱暴に言えば、熟練度が低く、人件費が安い国でも作れる部品と、少し人件費が高くても高い熟練度が求められる部品の最適生産地は異なるということである。それぞれコストと難易度との見合いで、最適な生産国があるのだ。
国を超えれば関税がかかってコストが上がるが、そこはそれ、域内経済というものがあって、その中では関税がかからない。例えばASEANの中ならば、基本的に無税で輸送ができる。できれば部品からアッセンブリーに至る輸出入は同一の経済地域内で行いたい。
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