■一度購入したユーザーはなかなか乗り換えない
趣味の用途では、ハイエースやキャラバンはキャンピングカーのベース車として使われた。ワンボックスバンの車内は、前席を除くと広い荷室になるから、キャンピングカーに必要なソファベッドや流し台を装着しやすい。
この用途でも、1980年頃から少なくとも2000年頃までは、ハイエースを支持する業者が圧倒的に多かった。
「キャラバンはハイエースに比べると、ポップアップルーフ(屋根の上に設営する昇降式のテント)を装着した時などにボディが柔らかくなる」
といわれた。
そして荷室容量のタップリしたワンボックスバンは、ハイエース(姉妹車のレジアスエースを含む)とキャラバンだけだから、実質的に二者択一だ。ハイエースを購入して満足できれば、よほど嫌なことがない限りキャラバンには乗り替えない。
また売却時の差額も大きい。背景には中古車輸出がある。ハイエースの開発者は「発展途上国などでは、ハイエースは人員から物資まで、あらゆるものを運ぶ。過剰な積載にも耐えている」という。ハイエースは故障や破損が生じにくいため、中古車は国内、海外の両方で人気が高く、中古車価格を吊り上げた。
そうなるとハイエースは高値で売れるため(困ったことに盗難件数も多いが)、資産価値が下がりにくい。これもハイエースが人気を高めた理由だ。
以上のようにさまざまな条件が絡み合い「ハイエースを選べば間違いない」という信頼性が確立された。
■キャラバンの逆襲が始まる
ただし日産もハイエースとキャラバンの販売格差を重く受け止め、2001年に発売された4代目の先代型、2012年に登場した5代目の現行型では、ボディを順次強固に造り込むようになった。
現行型の緊急自動ブレーキは、ハイエースにはトヨタセーフティセンスが採用されている。センサーにはミリ波レーダーと単眼カメラを使うから、歩行者も検知して緊急自動ブレーキを作動できる。作動速度の上限は、歩行者に対しては時速80km、車両に対しては法定速度を超える速度域までカバーされる。
キャラバンはミリ波レーダーのみだ。セレナやノートは単眼カメラをフロントウインドーの内側に装着するが、キャラバンではボディ形状の違いから取り付け位置が高くなりすぎるため、ミリ波レーダーのセンサーをグリルの下側に備える。ハイエースと違ってカメラを併用しないから、歩行者を検知できない。
このほかの装備はキャラバンも充実している。車両の周囲を上空から見たような映像としてルームミラーのディスプレイに表示するインテリジェントアラウンドビューモニターなどを用意した。
荷室の機能では、キャラバンのユーティリティナットが便利だ。天井の両脇やサイドウインドーの下側に穴が設けられ、棚やネットを取り付けやすい。
安全&快適装備については、ハイエースではスーパーGL、キャラバンではプレミアムGXが充実する。
エンジンは両車ともに直列4気筒のクリーンディーゼルターボが高性能だ。ハイエースの排気量は2.8Lで、最高出力が151馬力(3600回転)、最大トルクは30.6kg-m(1000〜3400回転)になる。キャラバンは2.5Lで129馬力(3200回転)・36.3kg-m(1400〜2000回転)だ。
■時間をかけて信頼性を積み上げること
現行型を見るかぎり、各種の数値や装備については、キャラバンもハイエースと比べて遜色のないところまで進化している。キャラバンの開発者によれば「もはや昔と違って、耐久性もハイエースに見劣りしない」とのことだが、信頼性は時間を費やして淡々と築いていくしかない。
冒頭で触れたとおり、6年前のキャラバンの売れ行きはハイエースのわずか14%だったが、今は43%まで高まった。キャラバンは商品力と信頼性の両面で、着実に進化している。
ハイエースの牙城を崩すのは難しいが、ユーザーのニーズに応えながらキャラバン独自の機能を採用していけば、販売格差も次第に縮まってくる。
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