トヨタの、いや日本の代表的商用バン、ハイエースが売れています。
2018年9月の月販台数は4829台で、同年1〜9月の累計販売台数は5万1588台。平均5732台。これはアルファードやステップワゴンを大きく上回る数字です。
いっぽうそのハイエースと40年以上ライバル関係を続けている日産のキャラバンはどうか、というと、こちらの同年9月販売台数は2588台、1〜9月は2万1971台にとどまります。
どうしてここまで差がついてしまったのか? 性能か? デザインか? 販売力か? 商用車に詳しい自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏に、ハイエースとキャラバン、それぞれの実力と「差」について伺いました。
文:渡辺陽一郎
■現在の差は2.3倍、かつては7倍!?
クルマの世界には、86対ロードスター、インプレッサスポーツ対アクセラスポーツのようなライバル争いがいくつか存在する。
商用車の世界では、トヨタ・ハイエース対日産・キャラバンが代表的だ。
両車ともにワンボックス形状の商用車で、空間効率が抜群に高い。軽商用車のエブリイ対ハイゼットカーゴにも当てはまることだが、ワンボックスバンでは、機能が似通ったライバル同士の組み合わせが成立する。
ただしハイエースとキャラバンでは、販売格差が大きい。
2018年1〜9月の累計登録台数を見ると、ハイエースは5万1588台、キャラバンは2万1971台であった。ハイエースはキャラバンの2.3倍も売れている。逆にキャラバンはハイエースの43%にとどまる。
それでも以前に比べると販売格差は縮まった。
キャラバンが先代型だった2012年1〜5月は、ハイエースが2万7272台、キャラバンは3732台であったからだ。ハイエースの売れ行きはキャラバンの7.3倍、キャラバンはハイエースのわずか14%だった。
つまり従来型のキャラバンは、ハイエースとは比較にならないほど人気が低かったが、現行型では43%まで売れるようになった。依然としてハイエースとの販売格差は激しいが、過去を振り返れば、キャラバンは人気を回復する途上にある。
それならなぜ、ハイエースとキャラバンの販売格差は著しく拡大したのか。
■キッカケとなったのは口コミ??
ハイエースの初代モデルは1967年、キャラバンは1973年に発売された。
商品力で明らかな違いが生じたのは、両車ともに2代目を販売していた1980年頃からだ。キャラバンはボディがねじれやすく、片輪を歩道に乗せた状態で駐車すると、スライドドアの開閉が困難になったりした。車両を平らな場所に置いて、しばらく時間が経過するとスライドドアは正常に戻ったが、作業性が悪くなってしまう。
その点、ハイエースであれば、同じような使い方をしてもスライドドアを開閉できた。荷室の一部だけに重い荷重が加わる過酷な荷物の積み方をした時も、ハイエースのほうが不具合が生じにくかった。
これは20〜40年前の話だが、商用車の評判は、仕事上のネットワークを通じて業界全体に伝わっていく。ハイエースのよい情報、キャラバンにとってはマイナスの情報が共有されてしまった。
こうなると新規で購入するユーザーも、同業者の評判を聞いてハイエースを選ぶ。
仮にスカイラインやフェアレディZといった日産車の好きなユーザーでも、仕事で使うクルマは信頼性を優先させ、ハイエースを買うことになった。
コメント
コメントの使い方